少年少女の裏仕事
@force16
第0話 チーム結成
2035年六月十四日の深夜。
眠らない街のアメリカ、ニューヨーク。
現在人口は百万人を越え、世界の上位であるアメリカの主要都市。
政治、経済、文化等多大な影響を与えている。
その繁華街の路地裏で、三人の男女が汚れた服を着た白人を囲んでいた。
白人の男は三人の若い男女を睨み、同時に怯えていた。
「Who are you guys? Do you know who I am?(お前ら何者だ?誰だか分かっているのか?)」
黒髪の整った顔立ちの十代半ばの少年が面白そうに白人に尋ねる。
「You. You're embezzlement of a company, you're fired, you're homeless, and you live in a back alley in New York, right?(お前。会社のカネ横領してクビになってホームレスになり、このニューヨークの裏路地に住んでるよな?)」
見た目は日本人の少年は流暢な英語で白人と話す。
「What about it!(それがどうした!)」
「Well, to put it straightforwardly, aren't you doing a crazy job for the Mafia by taking advantage of being homeless?(うーん、単刀直入に言うとさ、お前ホームレスなのを活かしてマフィアからヤバい仕事やってない?)」
白人は白々しく嘲笑して惚ける。
すると、黙って見ていた青髪の少女がスマホを使ってある写真を白人に見せる。
青髪の少女は美肌美人でイギリス系。
露出が多い服装で白人を半分悩殺する。
少女に見とれていた白人だったが、見せられたスマホの写真で顔が青ざめた。
それは白人がロシアンマフィアの男と話している写真、少女がスマホを横にスワイプすると、男からロシア製の
「Mr. Hardil. You have accepted the killing request from the Russian Mafia and have killed ten hostile Brazilian Mafia humans to this day.(ハーディルさん。あなたはロシアンマフィアから殺しの依頼を引き受け、今日までロシアンマフィアが敵対しているブラジリアンマフィアの人間を殺しましたね)」
「I'm sorry, but this story is out of the FBI. What if you show your work video? At this time, the security of surveillance cameras is loose. Evidence was immediately suppressed.(悪いけど、このネタはFBIから裏は取れてる。何なら、あなたが仕事してる映像見る?このご時世、監視カメラのセキュリティは緩い。すぐに証拠を押さえられたよ)」
紫のロングヘアーのブレザー、スカートを身に付けた少女が追い打ちをかけるように白人の男に言った。
白人の男はこの三人の若者がただ者ではない事を悟る。
FBIは現地の情報提供者を使う時がある。隠れて悪さを働いている犯罪者を取り締まる為だ。
FBIから情報を仕入れるのはほぼ不可能だ。内通者がいれば話は変わるが。
だがそれは実力がないと実行出来ない。
だから白人の男はそう結論付けた。
「If this happens, you're done. It may be erased at worst.(これがバレたらあんた終わりだな。最悪ロシア人に消されるかもな)」
白人の男は絶望し、その場で膝をつく。
それを見た三人は頷き合い、白人の男にある取引を持ちかける。
「Let's trade. If you transfer it to the $ 750,000 account you've saved, I'll let you go.(なら、取引しよう。お前が今まで貯めた75万ドル振り込めば逃がしてやる)」
「I'm going to Southeast Asia.(東南アジア行きの、ね)」
白人はそれで命が助かるのか何度も聞いた。
三人の男女には信用できる逃がし屋がいる。
その逃がし屋で白人の男を逃がそうとするのだ。
白人の男は真っ先に食い付いた。それで助かるなら何でも良かった。
三人の男女は白人の男に逃がし屋と落ち合う時間と場所を伝え、男を逃がした。
そして少年がスマホでFBIの担当者に繋げる。
「もしもしスミスさん?例のホームレス、ビンゴだった。奴はホームレスに扮したロシアンマフィアの鉄砲玉だった」
『そうか。ちゃんとこっちに来れるようにしたか?』
「逃がし屋の話したから、絶対に来る。まあ、せいぜいロシアンマフィアの検挙、成功させろよ」
『分かっている。後、奴の金が今口座に振り込まれた。それが報酬だ』
「オーライ。じゃ、契約完了だな。俺達の仕事はここまで」
『それにしても、まだ16の若者が便利屋紛いな事やってるとはな。凄腕でどんな仕事も引き受けて成功させる。オファーが多いんだって?』
「あんたみたいな奴等が鬱陶しいんだよ。俺らはフリーでやるのが良いのに、国の為だとか政治とか言って引き込もうとしてる。悪いけど、FBIにも入らないから」
『分かってる。後はこっちに任せろ。仕事があったらまた連絡する。じゃあな』
少年がスマホをしまうと、二人の少女がこれからどうするか尋ねる。
金を受け取った以上この路地裏に用はない。
三人は路地裏から離れ、繁華街を歩きながら会話する。
「で、これからどうする?これで目標の額に届いたわ」
「この稼業やってから半年、思ったより早く貯まったな。これなら……そろそろかもな」
「何ですか?」
「日本に行くぞ。久しぶりの休暇だ」
二人はその言葉を待っていたかのように少年の言葉に食い付いた。
少年はハァーと大きなため息をつく。
「何だよ。前から言ってたじゃんか」
「もう半年も待ったんだよ。仕事の疲れがドッときたわ」
「早く日本で一休みしたいです」
「なら早速空港に行くぞ。ちょうどロサンゼルス国際空港運良く日本行きのチケットが買えた」
少年は二人に三枚のチケットを見せた。
紫髪の少女がチケットを見てある事に気付いた。
「これ、高級な航空会社のサインね。どこで買ったの?」
「その航空会社の副社長。浮気のネタで出して貰った」
「どこにも悪い人はいますね。だからグレーの私達が活躍出来る」
「そういう事だ。タクシーでロサンゼルス国際空港まで行くぞ。金はいっぱいあるから心配するな」
友達に自慢するように少年は少女二人に言った。
二人は呆れながらも嬉しそうに微笑した。
それからしばらくして、三人はチケットで日本行きの飛行機に乗り、機内で楽しく雑談していた。
乗客の誰もがこの三人が裏仕事をしたと思っていない。
今時珍しい旅行帰りの若者だという印象だった。
「ゼロ。久しぶりに故郷に帰るけど、今の気持ちは?」
「期待や楽しみでいっぱいだ。数年はかかると思っていた仕事が半年で終わったんだ。早く家族に会いたいよ」
「……良いわね。ゼロは幸せな家族がいるもんね」
ゼロが気まずそうに紫髪の少女に謝る。
少女は大丈夫だとゼロと呼ばれた少年を安心させた。
「私は元から家族がいないし、優子も同じで似たような境遇だから。だから私達は友達になれたかもね」
「そういえば響子さんと初めて会ったのはまだ十歳の頃のベネズエラ。たまたまルーキーの響子さんとまだギャングの用心棒の私と一緒に仕事をしました」
優子と呼ばれた少女と響子と呼ばれた少女の馴れ初めを聞いてゼロは納得した。
最初にゼロが二人と出会ったのはロサンゼルス。その時は家族旅行で偶然町中で知り合った。
その頃から優子と響子は仲が良かった。
馴れ初めを聞いたゼロは道理で最初から二人で一緒にいると納得した。
「まあ今はお互い組織を抜けて、ゼロと一緒に色んな仕事をした。半年前に三人で便利屋みたいな仕事しないかと言われた時は驚いたわ。何をやるのか聞いたらこれからの金を集めるって」
「そういえばお金が集まったら私達に目的を話してくれると言いましたね。教えて下さい」
「そうだな。約束だしな」
乗員の女性から食事のメニュー表を受け取り、三人はそれぞれ異なった食事を頼んだ。
すぐにその食事がテーブルに置かれ、食べ初めてからゼロは二人に話し始めた。
「便利屋みたいな仕事してたのは、お試しだったんだ」
「お試し?」
「それが一番儲かる職だったから三人で半年間やった。ちなみに、その間二人が俺と一緒に仕事しても大丈夫なのか見定めてた」
「そうでしたか。では、私達は合格?」
「ああ。俺が仲間にするに値する女二人だ。俺の審査は厳しかっただろ?」
「道理で危険な仕事が多かったと思った」
響子が半年の仕事を思い出しながら語り、やがて嫌な事も思い出して苦虫を噛み潰したような顔になった。
「ゼロさんがこれからしたい事は、三人で何でも屋をやるという事ですか?」
「ああ。日本で休暇がてら何でも屋を営む計画を立てていこう。まだやる事は山積みだしな」
「良いじゃない。何にも縛られない仕事、好きよ」
「そうですね。私も賛成です。それに、私はゼロさんと響子さん。二人としか組めません」
「そうね。そこは優子と同じ。他の奴等はお断りよ」
二人はゼロの知識と戦闘を知っているからそれ以外とは組めないと口にした。
ゼロは自分が信頼されているのを察して、それを誤魔化すかのように天井に顔を向ける。
「でさ。日本に着いたらどこに向かうの?行き先は考えてある?」
「まずは俺の家族の家に行く。一応父さんと母さん、妹の零、後桜にもこれからの事を報告しないと」
「いいの?」
「安心しろ。皆口は固い。それに、父さんが多分準備のサポートしてくれる筈だ」
「分かりました。そっちはゼロさんに任せます。ところで……桜という方は……?」
「俺の親友だ」
ゼロが恥ずかしいのか窓に目を向ける。
二人はすぐに察してニヤニヤとゼロに問い詰める。
「珍しく歯切れが悪いじゃない。何?ただの親友じゃなさそうね」
「もしかして、恋人なのですか?」
「ちげえよ。本当にただの親友だって……」
「あ、その顔。ゼロ、その桜という親友に惚れてる?」
「やめてくれよ。ハァ、この時の二人はマジで面倒くさい」
ゼロはテーブルのグラスのジュースを一気に飲み干す。
それはまだ恥じらいがある自分に渇を入れたようだった。
だがゼロは優子と響子に弄られても不思議と嫌だとは思わなかった。
それが二人を心から認めていると気付いたら、ゼロは嬉しそうに頬を緩めた。
2035年の初夏、ゼロは仲間と一緒に日本に帰る。
それが大きな出来事の始まりだとも知らずに…………。
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