チート転生者になりたくて(停止)
人類種の点滴
本文
転生
異世界転生。そんなワードがある。現代とは,また違った別世界。科学的に証明できないことや,現象としてあり得ないモノが跋扈する世界。そこに転生するといったものだ。マーク・トウェイン著の『アーサー王宮廷のコネチカット・ヤンキー』の様に,(これは転移なのだが)異世界や過去に行き,そこで近代の技術力やこれまた超常の力を使い並みいる敵を子供が積み木を崩すかのように簡単に倒していくさまは起承転結関係なく,主人公がピンチに陥らない為か人気である。
そういった物語が生まれれば,当然それに憧れる者も出てくる訳だ。夢であるから,夢想であるからこそ自身に貴族がヘコヘコ頭を下げる。何処かの国の姫が自身に恋をして~。とありもしない事を考える。
そんな事を考えながら,男はパソコンから視線を上げ大きく体を伸ばす。会社に直接行かなくなった為に生まれた時間。趣味を行うほどには無い時間はそんなしょうもないことを考える時間となっていた。
「まぁ,結局。魔法は無いし,異世界があったとしてそれを知る機会なんて俺が生きている内にあるとは思えないけどな~」
結局,そう結論付ける。夢はあるが,それを証明する方法が途方もない。自分が生きている内には到底不可能。永遠にそれは証明されないとすら男は思った。
ふと,手元にあるスマホの充電が20%を下回っていることに気が付いた。別に急いで充電する必要は無いが,いざ何かしらの用事で外出した際に電池切れしているのも悪い。そう思った男は何処に充電器を片付けただろうかと頭をひねりながら,家の中を歩き回った。暫くして,テレビ台の下にある箱に入れたことを思い出し,無事発見。充電器をコンセントに差し,本体に充電のプラグを挿せば終わり。慣れた動作でそれを行おうとした瞬間。男の意識は暗転した。
死因は,所謂感電死。乱雑に入れられていた充電器はコード部分が破損しており,充電器を使用した際に運悪くそこを掴んでしまったが為だった。
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男は混乱した。自分が意識を失った理由は分からず,分かることは倒れてしまったのか視線が極端に低いことだった。目線を下にやれば,直ぐに地面が見えてくる。どう言いつくろった所で,地面に倒れているのは明白だ。その上,両手足に力がうまく入らない。聴覚もボンヤリしているのか。誰かが叫んでいるが,内容は全く理解できなかった。
どうにか四肢に力を入れて立ち上がろうと試行錯誤する。漸くしてどうにか立つことが出来た。しかし,未だに視線は低いままだ。そこで,ようやく男は自身の現状に目を向けた。目線が低いことは,この際気にしても分からない。先ずは,両手足の確認を。そう考え,改めて自身の手足を見た。食が細いことが起因して骨ばった見た目をしていた指は,全体的にプニプニしており,骨ばった指とは対極にある。
足も同様で,筋肉質とまではいかないがそれでもまだ筋肉はある方であったと記憶していた足も,プニプニとした見た目をしており,パッと見た際には足首の関節が分からないかもしれない。それ程だった。何処か他人事のように見ていた男は,それが自身の手足だと認識したとき,声にならない悲鳴を上げた。もしかしたら,悲鳴を上げていたのかもしれないが,それを男は認識できるほど余裕が無かった。
現実を受け入れられなかった男は,そのまま起きてから間髪入れずに気絶することとなった。脳がシャットダウンする中,誰かの困惑した声色が聞こえてきた気がした。
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