第12話 紀光

 紀光



その部屋は鳥居から見た風景とは違い、機械にあふれていた、多分、認識阻害魔術かな? そして、何に使うか解らない機械が多かった、そこにいる少女も機械かと思うほどに。


「……起きたのね。サターン。そして、飯野のお兄さんもお久しぶり」


「ああ、皆に助けてもらってな。というか名前は神奈でいいのか? それとも神奈の別端末だから、別に名前があるのか?」


ツインテールの茶色の毛、眼鏡をかけており、白衣を着ている。眠たそうな目の少女が欠伸しながら、サターンさんの話を聞いている。師匠は、その少女に軽く頭を下げる。


「……私は、紀光 文、皆もよろしくね。というか、見たことない顔もいるわね。名前は?」


あ、武備さんと僕の方を見て、また欠伸をしている。


「僕は、犬飼 奈波。師匠と同じ町に住んでるよ。宜しくね」


「あたしは~、武備 光。宜しくね~」


「ああ、儂は……」


「……貴女は覚えているわよ。ヴィーナスエルピス。最良世界の希望」


「ありがとう。というか、覚えられててはいけない存在なんだけど」


へ、どういう事? ヴィーナスさんを覚えている方がおかしいみたいな言い方だね。


「……記録ライブラリに一件も引っかからなかったけどね。本名不明、能力不明、顔不明、となると貴女か、そこの飯野のお兄さんだけよね」


師匠も? どういう事なんだろう? ヴィーナスさんはたしか、武備さんの言っていた、生前能力で、隠れているのかなって思うけど、師匠もその能力を持っているって事?


「成程、でも、映像ぐらい残ってたんじゃないかしら?」


「……あなたたちが映った場所だけ、エラーが出たのよね」


「成程、お主たち紀光でも、儂の事はちゃんと認識できないか。ふふふ、これはもう、能力なのか、呪いなのか解らないわね」


ヴィーナスさんは小さく笑い、ヴィーナスさん以外は沈黙する。この沈黙耐えらえれない!


「そ、そういえば、紀光って名前気になっていたんだけど、紀光 神奈との関係者? そしてさっきの皐文って子も見たことある気がするよ」


絶対違うだろう。その核心は無いけど、とりあえず、聞いてみた。どうしても沈黙に耐えれなかったからだ。


「ほう、君見所あるな。アタリだ。この子は紀光 神奈の別端末だそうだ。そして、我はあってないが、さっきまで皐文もいたのだろう?」


なんで、サターンさんが答えるのさ。


「ああ、言い忘れていたな。さっきの忍者は自分の妹の友達の皐文、日向 皐文だ」


「え、でも、さっきの忍者の子、僕より年上には見えなかったけど」


「あの世界は時間の流れがないみたいなんだ。しかし腹は減るとか言ってたな」


「え、え、じゃあ本物?」


「ああ」


僕はテンションが上がって、


「やった! 本物の英雄に会ったんだ! やった!」

 

そうはしゃぎ、武備さんの手を取りジャンプを繰り返した。同じように、武備さんも喜び、


「生きてた、生きてたよ~!」


と喜ぶこと、10分。師匠のげんこつをもらって、やっと落ち着いた。


「で、研究所はいつこの場所に移動したんだ。いつの間にか、自分の使い魔でも見つからないし、元の場所は廃墟になっていたし」


「……いや、場所は移動していないな。ただ、出入口を変えただけだな。まあ理由としては、ゴトに狙われているからだな」


頭イター! で、


「ゴトって誰?」


「紀光研究所を襲って回っている人の名前よね~」


武備さんが頭をさすりながら教えてくれた。


「……実際は、私たちの端末の裏切り者なんだけどね」


「端末が裏切るってどういう事?」


「……知らない、暴走したんだよね。それはそうと、出口に案内するね」


そう言いながら椅子から動かない。そして指だけをそっと壁に貼っている、張り紙をさして、


「それに触れて、魔力を込めると、転移出来るわね。ちなみにそこのやつが、街行きのやつね」


「ああ、世話になったな。文、またな」


そう言って、師匠は張り紙に触れると、消えてしまった。


「またね、文」


次にヴィーナスさんが触れて消える。


「じゃあな、文、神奈にもよろしく」


そして、サターンも消える。


「じゃあ、僕たちも行こうか」


「そうね~」


「……ちょっと待って。あなたたちは、エルピスを集合させるつもりなのかな?」


「ん~? そうだよ~。問題あるかしら~」


「……問題じゃないんだけど、なんでかな? って思ってね。だって、飯野のお兄さんは、妹たちを助けたいっていう願いがあるだろうけど、君たちには理由がなさそうだから」


 「あたしたちは~、幼い頃に珠樹さんに助けてもらったんだ~。だから、あたしたちは~、珠樹さんたちを助けたいんだ~」


「……そうなんだ。じゃあ私から言えることはないかな、じゃあね、エルピスたちを、そして私たちを宜しく」


「うん! 心配してくれてありがとう」


僕もついて行きたい。そう思う気持ちは、大きくなっていた。あの町から離れられて、飯野さんに鍛えてもらった力を試すことができる。戦闘は怖いけど、でも! わくわくしている自分がいるのも事実だ。


「どうしたの~、犬飼さん、帰ろう?」


「あ、あの! 僕もその旅について行っていいかな?」


「駄目だよ。周りのみんなが心配するよ~」


「でも、行きたいって言ったら?」


「あたしの事、名前で呼んでくれなきゃ駄目だよ~」


「じゃあ、僕のことも名前で呼んで!」


「うん、奈波ちゃん!」


「ありがとう! 光!」


ショートカットに触れ、魔力を込める。すると世界が回りだす。そして出た場所は、


「あれ、公園?」


いつも修行している公園だ。まだ朝日も昇っていない時間。もっと経っているかと思っていたんだけど、まあお母さんに怒られないからよし!

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