第5話 夜の海へ
夜の海へ
「海の中ってことなので、潜水艦も借りられないし、どうやら、水上から入れるようだから、空飛んでいくわよ」
そのヴィーナスさんの言葉に僕は驚き、
「武備さん飛べるの? 僕は飛べないんだけど」
「あれ? じゃあ飛び降りた時のは、軽重力魔術だったのかしら?」
「そうだよ。僕は重力操作系の魔術は得意なんだ」
「ならなんで飛べないの~?」
武備さんが首をかしげる。それに関しては、僕も気になっている。飛ぼうとすると、何故か絶対無理という気持ちになる。
「それは、奈波が空を飛ぶのに向いてないからだな。飛行系の魔術は適正が有るんだ。で、奈波ちゃんは適正が無かった。そういう事だ」
「じゃあ、僕は努力しても飛べはしないってこと?」
「そうなるな。だが、手段は他にもある。他の物の魔術で飛ぶ、または魔術を使わずに飛ぶ、だ」
そう師匠が言うと、ウエストポーチを外して、此方に渡してきた。そのポーチはずっしりと重く、12個のポケットが付いており、9か所には卵のような物が11個、1か所には同じく卵のような物が12個、もう1か所に卵は10個、最後の1か所には何も入ってない。
「卵? 何これ?」
「卵っぽいが卵ではない。よく取り出してみてみるといい」
そう言われたので、一つ取り出して見てみると、半透明で、赤色の付いた、火のようなも文様が中で回転している。他ポケットを見ると、水色の風模様、青の水模様、等々があった。
「それは、サモンエッグといってだな、召喚簡略用の道具だ。珠樹も使っていた物だ」
「え、そうなんだ! じゃあ使わせてもらうよ」
珠樹さんが使っていた物なら、僕も使いたい。でも、卵みたいに割ろうとしても、割れない。掲げても何も起きない。何で? 何か必要な呪文でもあるのかな?
「これってどう使うのかな?」
「それは、その文様の属性を当てるんだ。例えば、風の文様なら強い風をぶつければ、風鳥が出る。魔力が込められた風だと、ペガサスなどの空を飛べる生き物が出てくる。そんな感じだ。ちなみに、手に持ったままだと武器が、触れていないと属性の生き物が現れるんだ」
「じゃあ、今は風のサモンエッグに、魔力で作った風をぶつければいいのかな?」
「それはそうだが、魔力を混ぜてないと、ちゃんと発動しないからな。例えば、魔術で、風向きを変えるとかだと無理だな」
「うん、わかったよ」
僕の得意属性は、師匠に調べてもらった結果、闇属性だ。けど、師匠には教えられないと言われ、他の属性の魔術を教えてもらっていた。だから、風属性魔術も使える。
「はあぁ!」
僕の魔力が混ざった風をサモンエッグにぶつける。すると、卵が変化し始めた。割れたのか、卵自体の形が変わって行っているのかはわからない。けどそこに大きめの馬が現れた。ただ大きいだけではない、翼が生えている。いわゆるペガサスかな?
「これなら、奈波も怖くはないだろう?」
「うん、ありがとう! 師匠」
「どういたしまして、では行こうか。本当は船か、飛行機が欲しいところだが、船は遅い、飛行機は調達できないのでな」
「つまり、それだけ遠いのね?」
「そうだ、遠い。最高速で飛んでも、約4時間ぐらいか」
武備さんは翼を生やし、ヴィーナスさんは浮遊魔術で少しとんだところで、その話を聞いたため、二人とも地上に戻り、
「転移魔法じゃいけないのかしら?」
と二人が声をそろえて言う。確かにそうだよね。場所が判っているならそれで行けないのかな?
「そうか、その手があったな。は皆は、少し地上で待っていてくれ、自分は魔法陣を書く」
「わかったわ。では魔法陣が完成するまで待ちましょう」
隣に、武備さんが座る。そうだあれを聞いてみよう、そう思い僕は口を開く。
「あのさ、武備さん。君たちはほかの町も旅してきたんだよね?」
「ええ、そうよ」
「ほかの町の人たちは、飯野さんたちの事、どう言っていたの?」
「他の町の人たちは全員、あたしに石を投げたり、つばを吐いたり、マシな時でも、皆に無視されたわ。だからその町では買い物は出来なかったわよ。まあ、他の世界では、何の話かなと聞いてくれたり、面白い話だなとは言われたわよ」
「そうなんだ、すごいね。僕は、皆に差別されるのが嫌で、自分に嘘を吐いて過ごしていたんだ。僕は逃げてたんだ」
強いなぁ。僕には真似できなかった。けど僕もそんなに強く、誰にも負けない意志を持てなかった。
「逃げて何が悪いのかしら? あたしは、石投げられた時は普通に逃げたもん。それと、どこが違うのかわからないわ」
「そうね。儂は自分の為、仲間の為に、逃げれるほうが良いと思うわ。逃げなきゃいけない時に逃げれない人間はすぐに死んでしまうのよ」
「でも、君たちは逃げてないじゃないか。それなのに、そんなこと言われても」
「あたしたちは逃げ回っているのよ。石を投げられたり、悪意を向けられたり、それに元の世界からあたしたちは逃げてきたのよ」
「どうしてさ?」
そうこうしている内に、地面が光り出した。
「魔法陣の完成だ。皆少し浮遊してくれ。着いたらそこは海の上だからな」
「はーい」
「はい」
武備さんと僕は返事する。僕はペガサスに騎乗し、武備さんは、翼を生やして、ヴィーナスさんは浮遊魔術? を使った。そして、師匠は少しホバーしながら、地面に手を付けて、
「行くぞ!」
地面が光る、周りも光であふれ出す。あまりの眩しさで僕は目をつぶり、次開けた瞬間には、海上をペガサスで飛んでいた。
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