第2話

 面会受付の窓口へ向かい、あらかじめ患者の家族に連絡しておいた旨を伝え、面会者バッジをもらってつける。ネクタイがゆるんだままだ。僕は急いでトイレを探して駆け込み、半そでのワイシャツとストライプのネクタイをきれいに直した。エレベーターで3階へ上がり、指定された病室へ向かう。見つけた部屋は、4人部屋だった。


 左手奥のベッドまで静かに歩き、カーテンのこちら側から挨拶して名乗ると、すぐに彼女の母親らしき女性が顔を出す。深くお辞儀をし、改めて丁寧に挨拶をした。


「わざわざこんなところまで、ありがとうございます」

「とんでもないことです、私こそ時間外の夕方に申し訳ありません」

「いいえ。娘は起きていますが、話ができなくて」


 ベッドに横たわって大きな目でこちらを見る彼女は、あごから頭にかけて何重にも包帯を巻かれて、とても窮屈で痛そうに見えた。


「こんにちは。具合はどう?」


 話ができないと聞いて、自然と小声になる。彼女は目を細めて、こくりこくりとうなずいてくれた。


「まだかなり痛いようなんですよ。すみません、せっかく来ていただいたのにお話ができなくて」

「いえ、そんな」

「でも、喜んでます」


 母親の言葉はそれほど嘘でもないのではないかと感じられた。彼女の表情は包帯にさえぎられてよく見えないが、目はにこにこと笑っている様子がある。


「よかった、元気そうで」

「ずいぶん元気になりました。怪我さえ治ればすぐに退院できますから」


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