第61話 凛実の方の戦い
凛実の方視点
私……いえ、桜王家の人間が動けば護衛の為の人間も動くわけで。
それは、相手方も同じ。
外周りにて三の丸を目指すには、距離は長く時間もかかるので渡り廊下を使って屋敷に向かいながら、見張りとかがいなくて無用心だな……と。
しかし、さすがに外喜の屋敷周りには、見張りがいて入り込む隙間などなくて…… 物陰に隠れて様子を見る事にしたのだけれど。
それにしても。己の欲望の為に家臣達を駒のように……私は、同じ源本の家の者として悲しくて、申し訳なくて、辛かった。
(叔父は、こうして自分を支えてくれる者達の働きによって、日々の生活が出来ている事を理解してるのかしら)
そんな事を思っていると、桜王家の誰かの命を受けたのだろう。見張りの者達を……
本当にあっという間で……相手に反撃の隙を与えない素早い動きで…… 主に拳で相手の急所(特にみぞおち)を狙って倒してしまうと、どこかへ連れて行ってしまったの……
「凄いわ……」
(って、 感心してる場合じゃないわ!)
その隙に、屋敷内へ潜り込んで、叔父の部屋の近くに近付くと…… 外と同じように、屋敷内の見張りの者達も居なくなっていて。
しはらくして。
(楓禾姫様? 湖紗若様?)
それこそ、お供の一人もにも付けずに……
私は何も考えず、 感情だけで動いた事が恥ずかしかったの。
この短時間で、きっと、殿様も、楓希の方様も、陽様も。詠史殿が策を練って。楓禾姫様と湖紗若様をお守りすべく、動き出しているのだと思ったから。稜弥様に鈴も動き出しているかもしれない。
それでも……
(私にしか出来ない事をするのよ。反省は後。落ち込んでいる場合じゃないわ)
部屋の襖を少し開けて様子を伺うと。楓禾姫様は部屋に入った瞬間、部屋の物の位置関係を確認しておられ。湖紗若様は、上座と下座の座布団の配置を変えておられる。
思わず笑みがこぼれてしまう。
と、前方に人の気配……
曲がり角を曲がって来たら鉢合わせしてしまう! 部屋の前の物置部屋? に素早く入り込んで
(間に合った……)
叔父が部屋に入ったのを確認して。再び襖の前に張り付いて。
遅れて来た叔父の悔しそうな顔……
(仕方ないわよね。常識を知らない人間に上に立つような力が与えられるはずがないもの)
そんな事を思ったの。
ゆずなとおゆりが、必死にお茶の葉と、お湯を……
(どうか気付かれませんように……)
祈って。
叔父の前に置かれたお茶と、饅頭。
『外喜様。ご一緒に頂きませんか?』
『い、いや、私は今は』
叔父の反応を確かめている楓禾姫様に、焦っている叔父。
(叔父上様、それでは、何もしてなくても疑われるわよ?)
当然だけど、稜弥様、詠殿、鈴にも、私の存在が。楓禾姫様に、湖紗若様にまで悟られたみたいね。
(どうか、私の存在を気にする事なく動いてちょうだい!)
そう、念を送った瞬間……
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