第49話 親の愛

  数日後


 -楓希の方.陽の部屋-


「誠で……ごさいますか?」


 涙で瞳を潤ませながら、自分を見つめてくる楓希の方。瞳の潤んでいく 陽。


「はい……誠です」


 爽も、瞳を潤ませ頷き言葉を返す。


(己の想いの為に、楓禾姫を。湖紗若を。鈴を。そして義父母を涙させて……)


「なぜ……そのような……私にだけは……」


「そなたの意図した事は何だ?」


 母親として、なぜ。どうして? 感情が溢れ出すのも娘への深き愛。


 努めて冷静でいよう。と。真実を見極めようとするのも、父親の娘への深き愛。


 堪えきれずに涙する、 楓希の方の方の背中を擦りながら、涙している陽様の胸には、どんな想いが溢れ出しているのだろう? 



「楓菜の方の『もう……楓禾姫と、湖紗若を

……大人の都合に巻き込みたく無い』という想い。鈴への想い。子供達が成人してから外喜を……と。願った気持ちを叶える為に、私は何をすべきか考えました。今お話した事を伏せる事で、お義母上様とお義父上様が外喜に『いつの日か……』と強い意思で相対し、暴走を止めていて下さると考えました」


(私の想いは伝わるだろうか?)


「そうか……"事実"を知っていたら『いつまでも……外喜。お前の好きにはさせないぞ』その想いに綻びが生じて悟られるかも知れない……そういう事だな」


(さすがお義父上様……)


「はい……お義母上様。黙っていて申し訳ありませんでした」


 どんな理由があろうとも。 自分だけは話して欲しかった…… 楓希の方の想いが痛いほど伝わって来て。爽は心が痛かった。


「爽……楓禾姫と、湖紗若。鈴にも伝えたと申しましたね?」


 そう呟き、涙に濡れた瞳を拭い。顔を上げた楓希の方の表情は、母親の顔では無く。稜禾詠ノ国を桜王家を背負って生きて来た女性の顔であった。


「はい」


「子供達が立ち上がったという事は、外喜が動き出すやもしれぬ。ゆえに、楓禾姫。湖紗若。鈴。に危険が迫っている。それを阻止する為に陵弥と詠史。なずなも。動き出す。そして、外喜に印籠を渡す最後の機会であるという事ですね?」


「はい」


(さすが…… 楓希の方……)


 爽は 、瞬時に悟られた楓希の方に感嘆し。 ますます、尊敬の念を深めるのだった。



「 子供達は、これだけの事を想定しております」


 爽の話に。楓希の方 、陽は深く頷く。


「 お二方にも、それぞれの役割を果たして頂きたいと……」


「分かりました」


「分かった」


 しかし、爽はふと思った。


「私達も子供達も含めて。外喜への憎しみから、派手に懲らしめたいという思いから。事が起きてからの対処の方法ばかり話しておりますが。様々な証拠も揃っているのですから。事が起きる前に有無を言わせずに、外喜を捕まえて。追い落とせばいいだけの話ですよね」


 わざわざ、危ない橋を渡って 。子供達を危険に合わせる親がどこにいる。


 爽。楓希の方も、陽も。親として子供達を危険目に合わせるなど言語道断だと思い至ると。外喜を捕らえて、決着を付けようではないか。という話でまとまり掛けたその時……













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