第23話 お慕いするお方と……
「お母上様、お父上様……」
「な、なんです?」
だいぶ長い時を、思い巡らせるように黙りこくっていた楓菜姫に急に話しかけられて、返事を返した楓希の方と陽声は裏返ってしまった。
「私の運命を、受け入れます。 ただ一つわがままを許されるのならば……私が私のお慕いするお方と…… 夫婦になってよろしゅうございますか?」
口調は、キッパリと。けれども不安に瞳を揺らしながら楓菜姫が、母と父に問い掛けると。
「ええ、良いですよ」
なんとなく、楓菜姫の思う人を瞼に思い浮かべながら。母の楓希の方は即答し、その言葉に父の陽も深く頷き返した。
その瞬間、楓菜姫は、綺麗な大きな瞳から大粒の涙を溢すと。
「ありがとうございます。お母上様。お父上様…… 」
と。
──
これからの事、様々な事に覚悟を決め、気持ちを整理するまで一月……
楓菜姫は使いの者に、使いを頼むと、深く深呼吸を繰り返し、心を落ち着かせる。
しばらくして、先触れにて。
「まもなくお着きになられます」
報告がもたらされた。
(どうか……)
「お着きになられました」
跳ね上がる心音……
「……どうぞ」
楓菜姫には、努めて冷静に答えるだけで精一杯だった。
「失礼致します」
「お呼び立てして 申し訳ございません。爽様」
「何です? 改まった呼び名は? いつも通りに呼んで下さいませ。楓菜姫様」
緊張し過ぎて、ともすれば倒れそうな自分とは裏腹に。そんな事を言いながら上座に座る自分の前、下座に腰を下ろした爽。
おかげで緊張が削がれた楓菜姫だった
「ふふ、爽殿に無理難題を了承して頂きたくてつい」
楓菜姫は、花がほころぶように綺麗な微笑みを浮かべ。
しかし、震える声で……
「あの……」
言い掛けたのだが。
「あの……」
声音を震わせながら……爽は。
「楓菜姫様。この、
楓菜姫に想いを告げたのだった。
(え?)
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます