第15話 ただ者ではないお方だった……

-屋根裏部屋-


詠史side


私は、城内の家臣団が住まう区画に屋敷を賜り父と共に暮らしている。


一仕事を終え、かわやにて用を足し、

手水場ちょうずばにて手を清めて。


腰をおろし。


(ふぅ)


さぁ、休むかと思った瞬間。


「失礼致します。楓禾姫様より使いが参っております」


我が家の下男が告げに来て。


(……)



-屋根裏部屋-



「楓禾姫……なぜに屋根裏部屋に呼び出されるのです?」


急ぎ、場内屋根裏部屋に向かうと、先客の稜弥様がおられた。


「秘密裏の話ゆえ、屋根裏部屋に来て頂いたのです。稜弥様も、詠史殿も。一日の仕事を終えて休もうとされていたのでしょう?ごめんなさいね」


正直、これから?と思った自分を殴りたくなった。労りの言葉をかけて頂いて、気分が跳ね上がったから。


(単純だなぁ、私は)


そんな事思っていたのだけれど。



-ジッ-


(楓禾姫…… ジッと見つめないで頂きたい。 左隣りに座る稜弥様からの、負の感情を強烈に感じるではないですか)


「どうです?詠史殿。六年前に何が起きたのか分かりましたか?」


「楓禾姫? どういう意味でしょう?」


「だって、詠史殿は。絵師。しかしてその実態は……諜報活動をなされている。違いますか?」


確かに私は、屋根裏に潜み、稜也様と、お父上に殿様の。軒下に潜り込み鈴様と、凛実の方様の。話を聞いたけども……




思わず楓禾姫を凝視していた。同じく隣りの稜弥様も。


「稜弥様まで、何を驚かれでいるのです?聡い貴方様が、疑問に思った事をそのままになさる訳がありませんでしょう?」


稜弥「はぁ、まぁ……あっすみませんっ。失礼な物言いを致しました。お許し下さい。楓禾姫様!」


「構いませんよ。今のは、私の言い方が悪かったのですから。詠史殿?大丈夫ですか?六年前に、絵師である貴方のお父上に『跡継ぎとして、私に弟子入りしました。せがれの詠史です』と紹介された時に。十二で弟子入り。早いのね。と思ったのですよ」


「六年前、楓禾姫(様)は十歳ですよね!?」



思わず、稜也様と同時に叫んでいた。




ただ者ではないお方だった……


普段は、ほんわかとされているようで……聡さを、ただ隠しておられるだけの……



*廁 トイレ

**手水場 廁近くの手洗い場

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