第26話

私の忠告に怯えたのかアンネは早々に立ち去って行った。

普段通りの騒がしさを取り戻しつつある食堂。レオンハルトと話したがっている女生徒達が彼を見ているが私の存在が怖いのか誰も近付こうとしない。

これで良かったのかしら。

後で愚痴を吐かれそうだと思うが生徒会役員として見逃せなかったのだから仕方ない話だ。


「リーゼ、先程はありがとうございました」


キラキラした笑顔でお礼を言うレオンハルト。にこりと笑って「生徒会として見逃せなかったので」と返事をする。


「是非お礼を…」

「困っている方を助けるのは当然の事ですのでお気になさらずに」


次期王太子妃としては隣国王子と仲良くするのは悪くない事。しかし仲が良過ぎても変に疑われてしまう可能性がある。流石にそれは困るのだ。

笑顔でお礼を拒否するとレオンハルトは苦笑いを浮かべた。


「友人を待たせていますので私達は失礼します」


私とユリアーナが離れたところで学食に居れば他の生徒の牽制にもなるだろう。

レオンハルトは「ご友人ですか?」と聞いてくる。


「ええ、フィンスターニス公爵令嬢です」


わざわざ教える必要もなかったが私とアレクシアが友人である事を知って欲しかったのだ。


「シアと仲が良いのですか?」

「シア?」


どうして愛称呼びをしているのだろうか。

首を傾げると「愛称で呼ぶ許可を頂いたので」と返事がやってくる。

レオンハルトを見ると照れ臭そうに笑っていた。明らかにアレクシアを意識しているように感じられるけど、どうなのだろうか。


「仲良しですよ」

「そう、ですか…」

「それが何か?」

「い、いえ。実は彼女の事が気になっていて…。変ですよね、今日会ったばかりなのに」


恥ずかしそうに言うレオンハルト。動揺が表情に出そうになり誤魔化す為にユリアーナを見ると遠くを見つめながら「嘘でしょ」と呟いていた。

私も嘘だと思いますよ。


「本人に伝えてみるのは如何でしょうか」

「それは出来ません。僕には結婚を約束した相手が居るので」

「結婚?レオン様には婚約者がいらっしゃらないですよね?」


一体誰と結婚の約束をしているのだろうか。

首を傾げるとレオンハルトは悲しそうに笑って「実は…いえ、何でもありません」と誤魔化す。

何か事情があるのだろう。

疑問に思うが逃げるように学食を出て行ってしまった彼から話を聞く事は叶わなかった。


「今のどういう意味なのかしら…」

「さぁ、親に決められた結婚相手が居るんじゃない?」


ユリアーナと二人揃って首を傾げた。



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