第23話
「シア」
アレクシアの席まで向かうと何故か疲れ顔で迎えられる。
どうかしたのだろうか。
「大丈夫?」
「心労が凄くて…」
胸元を押さえながら呟くアレクシア。どうやら好きな人が近くにいる事が心臓に負担をかけているらしい。
顔を押さえて「いちいち話しかけてこないでよ、あの馬鹿」と言う。
そういえばレオンハルトは事あるごとにアレクシアに話しかけていた気がする。席が前後で話しかけやすいのか、それとも別の理由があるのか。今のところは仲が悪くなる事はないだろう。
「とりあえず昼食に行きましょう」
「らぶらぶ彼氏は放置で良いの?」
周りに人が居ないのを良い事に揶揄うように言ってくるアレクシア。後ろでユリアーナが吹き出した理由は先程のベルンハルトとのやりとりを近くで見ていたからだろう。
苦笑いで「大丈夫だから」と返事をする。
迎えに来てくれたフィーネと一緒に学食に向かうと大騒ぎになっていた。
「レオンハルト殿下、大人気ね」
ユリアーナが呟く。
学食には女生徒達に囲まれるレオンハルトが居たのだ。それもクラスの女子達だけじゃなく他クラス、他学年の生徒にも囲まれてしまっている。
迷惑にならなければ良いのだけど。
注文に行こうとした瞬間、ぴたりと足が止まる。
「あー、レオンハルト様ぁ!」
甘ったるい声を響かせたのは関わりたくない人ランキングで一位を獲得しているアンネだった。
名前を呼ばれたレオンハルトは驚いた表情を見せる。
周りの目を気にせず彼のところに向かって走り出すアンネに頭が痛くなった。
「厄介なのが来ちゃったわね」
「問題を起こす前にどうにかしないと」
歩き出そうとする私達を引き止めたのはアレクシアだった。振り向くと「ちょっと待って」と言われてしまう。
彼女としても初恋の人にアンネが絡むのは避けたいはず。それなのにどうして私達を止めるのだろうか。
「レオン様とアンネがどう絡むのか見たいの」
「どうして?」
「もしも彼が惹かれるような事があれば邪魔は出来ないでしょ」
目を逸らして言うアレクシア。
ああ、なるほど。自分とレオンハルトの距離が縮まる前にアンネと彼がどうにかなってしまえば後々傷付かずに済むと思っているのだろう。
それで良いのだろうかと思うが私としてもレオンハルトがどんな反応をするのか見たい気もする。
問題を起こさないのなら。話しかけるくらいなら良いだろう。
「レオンハルト様ぁ!こんにちは」
ぼんやりとアンネとレオンハルトのやりとりを見守る事にした。
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