第23話
「ちょっと聞いてるの!」
何でしょうね、この状況。
どういうわけか私がアンネに絡まれている。
折角、今日は生徒会も公務もなくのんびり寝る事が出来るはずだったのに。面倒な事に巻き込まないで欲しい。
「あの、どちら様ですか?」
「は?」
「名前です。貴女は誰ですか?」
今まで絡まれなかったのにどういう風の吹き回しだと苛立つ気持ちを抑えながら尋ねる。
いい加減名乗って貰わないと名前を呼べませんからね。
「あ、アンネ。アンネ・フォン・シェーンよ」
名乗り慣れていないのか途中詰まりながら名乗ってくれました。
これでようやく特進クラス全員も彼女の名前を知れましたね。
高位貴族ばかりのクラスなので下手したらシェーン伯爵家が睨まれる可能性がある。しかし仕方ない。彼女を自由にさせている責任があるのだから。
「私はトルデリーゼ…」
「知ってるわよ!」
私に名乗らせる気はないみたいだ。
ここが学園で良かったですね。お茶会の席だったら確実に追い出されていますよ。
「お前…」
怒ろうとしてくれているベルンハルトを手で止める。
気持ちは嬉しいけど絡まれているのは私なのだ。私が相手をするのが正しいし、ベルンハルトが素を晒したらアンネが煩くなるに決まっている。
ここは任せて欲しい。
「それでアンネ様が私に何の用でしょうか?」
「だから、私のベルンハルト様から離れなさいって言ってるのよ」
このクソア…いえ、お馬鹿さんは何を言っているのでしょうね。
「誰のベルンハルト様ですか?」
キツく睨むと流石に不味い事を言ったのが分かったのかアンネは真っ青になる。
震えてしまってますよ。
魔法を使っているわけでも、魔力を放っているわけでもないですけどね。
「あの…」
「それからここは貴女の教室じゃないのです。用もないのにやって来られると迷惑です」
人を睨むって気分が良いものではないのですが、今回の場合は仕方がありません。
「私は無駄な事が嫌いです」
「は、はい…」
「貴女と話している時間は無駄になりそうです。もう行っても良いですか?」
恐怖を感じたのかアンネは無言で首を縦に振る。
普段からそれくらい素直だったら可愛いのですけどね。
折角可愛い顔をしているのに性格があれでは勿体ない。
「さて、帰りましょうか」
「ええ」
ユリアーナを連れて、既に教室の外で待機してくれているフィーネのところに向かった。
私が教室を出る前にアンネが走り去って行ったけど。
「リーゼ様、流石ですね」
「怒った美人って怖いわよね。スッキリしたから良いけど」
ユリアーナは楽しそうに笑ってみせた。
見世物じゃないのだけど…。
そう思っていたら教室から拍手が聞こえてくる。
「トルデリーゼ様、格好良かったです」
「あのお花畑女によく言ってくれました」
「やめてくれると良いですね!」
クラスメイト達に言われる。
てっきり批判されるかと思ったのですが…。
おそらくアンネの態度に辟易としていたのでしょう。
「流石はリーゼですね」
蕩けるような笑みを送ってきたのはベルンハルトだった。
皆の前でその笑顔を見せるのはやめて欲しいですね。
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