幕間6※ベルンハルト視点
トルデリーゼの言葉にぽかんと口を開く。
「関係って婚約者だろう?」
「そうだけど…」
「何か不満?」
両想いの婚約者なのだ。
今更婚約者以外の関係になりたいと言うのか?
「恋人になりたいなって…」
真っ赤になりながら告げられたのは愛らしい言葉。
彼女は僕をどうしたいと言うのだ。
悶え殺したいのか?
「結婚するまでは恋人で居ようか」
「良いの?面倒じゃない?」
好きな人に恋人になりたいと言われてどうして面倒だと思うのだろうか。
「リーゼが可愛いから良いよ」
笑顔で返せば呆れたように「答えになってないから」と返してくるトルデリーゼ。すぐに嬉しそうな表情に変わる。
「頰が緩んでいるけどそんなに嬉しい?」
「嬉しい…」
本当に可愛過ぎるな。
頰を緩みを見せたくなくて「僕も同じだ」と言いながら抱き締める。遠慮がちに背中に回される腕にだらしくなる表情。
幸せ過ぎて死にそうだ。
「恋人なら名前で呼んでよ」
「呼んでいるけど?」
「呼び捨てにして欲しいのだけど」
既に敬語は外されているのだ。次は呼び捨てにしてもらえると嬉しい。
そう思って言うと王族相手に不味いと思っているのか苦笑いで「流石にそれは…」と返されてしまう。
「恋人は対等な存在だろう?」
「恋人でも敬称を付ける事はあるわ。敬語も珍しくないじゃない」
簡単に折れてはくれないか。
あっさり呼び捨てにして貰えると思っていたので微妙な気分だ。
「僕は呼び捨てが良い」
「そう言われても…」
「呼んでみて?」
トルデリーゼは意外と押しに弱い。
笑顔で強請ってみると悔しそうな表情を見せられた。
ぎゅっとしがみ付きながら見上げてくる彼女はちょっとだけ涙目だ。
「べ、ベルン…」
「うん」
「もう良い?」
恥ずかしくて堪らないのだろう。
逃げようとするトルデリーゼ。勿論逃すつもりはない。
「駄目、もっと呼んで」
抱き締める力を強めてキスを贈る。
真っ赤になって慌てるのはキス自体が嫌だからじゃないと思う。おそらく人前でキスされているのが恥ずかしくて嫌なのだろう。
可愛過ぎる姿に理性がどこかへ飛んで行きそうだ。
「呼んでくれないともっとするよ」
「分かったから!呼ぶからやめて…!」
よし、言質を取った。
「嬉しいな。初めて会った時に呼ばせてやるって思ってたから」
六年前から決めていた事がどんどんに達成されていく。充足感を感じる。
「結婚するまでは二人きりの時だけで呼ぶから」
「人前では?」
「今まで通りベルン様で」
どうしてそうなるのだ。
周りにトルデリーゼが特別だと自慢したいのに
「敬語も人前では続行するって事?」
「当たり前じゃない」
まさかと思って聞いてみたら当然だと返されてしまう。
それでは今まで通りじゃないか。
「残念だな。ディルクみたいに気軽にしてくれて良いのに」
「私はディルク様みたいにはなれないわ」
「なってほしくもないけど。あれも筋肉バカみたいなところあるし」
トルデリーゼには鍛えて欲しくない。
その気持ちを込めて言うと不満気な表情を返される。
さっきの発言を引き摺っているとバレたのだろう。
「人前で敬語を外させるのが当面の目標かな」
「外させる気満々じゃない…」
「うん。僕は決めた事は絶対にやらせるからね」
「知っているわ」
敬語も敬称も外させる。
そしてトルデリーゼが僕の特別な人であると見せびらかすのだ。
微笑みかけると苦笑いを返される。
「ベルンって狡い人ね」
僕を振り回しているのはリーゼ、君だ。
君の方が狡い人だと思うよ。
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