幕間5※ベルンハルト視点
トルデリーゼの事はいつまでも抱き締めていたいけど大事な話をする為に解放する。
「ところで」
「どうしたの?」
「君の話の中で出てきていた破滅回避ってどうするの?」
「その話ね…」
トルデリーゼを断罪する気はないがもしもという場合がある。
彼女の中に残る不安を取り除く為に尋ねると面倒臭そうな表情を見せられた。
「どうして面倒そうな表情するんだ」
「私が思う破滅は貴方が私を嫌いになる事よ。嫌いになるご予定は?」
「ない」
「それなら良いじゃない」
「そうか……ってそういう問題じゃないだろ!」
僕がトルデリーゼを嫌いになる事はないが彼女の話に出てきた主人公の存在が気になるのだ。
「主人公だっけ?あれが変な動きを見せたらどうする気?」
主人公って何?って表情を見せるトルデリーゼに苦笑いが出てくる。
「忘れてたのか?さっきまで散々話してたのに」
「もう良いかなって…」
長年悩み続けていたのに解決した途端にこれか。
あっさりとした性格は彼女の良いところだけど悪いところでもある。
「全く。それがもし君と同じように前世の記憶持ちで、なんだっけ、電波だっけ?だったら君を貶めてくるのだろう」
彼女の話の中に出てきた電波系と呼ばれる存在はなかなかに厄介な存在だそうだ。
どうやら何があっても悪役令嬢とされている人物を破滅に導こうとするらしい。つまり主人公を放置しているとゲームの中で悪役令嬢とされているトルデリーゼに迷惑がかかってしまう可能性があるというわけだ。
それを僕が容認するわけがない。
「主人公、居ないかもしれないわ」
「いや、居るよ」
現実逃避したい気持ちは分かるけど残念ながらゲームの中で主人公とされている人物はこの世界に存在するのだ。
「どうして知ってるのよ…」
僕の返しにトルデリーゼは不満気な表情を見せた。
どうせ僕が主人公に興味があると勘違いしているのだろうが全くもって違う。
「言っておくけど彼女の事は興味ないから」
「はい…」
「君が話していた通りシェーン伯爵が最近アンネって子を母親と一緒に引き取った記録がある」
王族として国に住まう貴族は全員把握しておかなければいけない。つい最近になって新しく貴族となった元平民の事は確認済みだ。
「それ主人公の名前ね…」
「そうか…」
主人公の名前は聞かされていなかったがアンネという少女で間違いないらしい。
トルデリーゼは苦い表情を見せる。
そして目の前にいる僕以外の事を考え始めた。
「また他の人の事を考えてる」
「兄の事を考えていたの」
「リアンの事でも駄目だ」
何故アードリアンの事を考え始めたのか想像出来ないが僕と居るのだから他の男の事を考えて欲しくない。
酷い我儘だ。
「でも、ベルン様は主人公の事を考えているじゃない」
「リーゼの事を考えた結果、仕方なくだ」
棚上げしているような台詞だが本当に仕方なく考えているのだ。トルデリーゼに危害を与えない人間であれば考えたりしない。
「この世界はゲームとは違うけど、似てしまっているのも事実。彼女の事は警戒するべきだ」
「そうね…」
電波系と呼ばれる厄介な存在でなければそこまで警戒する事もないのだろう。
しかし懸念がある以上は放置しておく事も出来ない。
「今から対策を考えよう」
「面倒ね」
「リーゼ」
自分の事なのにどうして面倒臭がるのだ。
「私はベルン様と仲良く学園に通いたいのにいちいち主人公の事を考えないといけないとか嫌なのよ」
「それは嬉しいけど…」
「ベルン様が私の事を考えてくれてるのは分かるわ。でも、主人公の事を考えている今の状況も腹立たしいの。だから、その、今からその心配をする必要はないと…」
凄い面倒な事を言われているのに可愛く感じるのは彼女の気持ちが伝わってくるせいだ。
どれだけ僕の事が好きかよく分かる。
「面倒でごめんなさい」
「いや、嬉しいから良いけど…」
彼女の気持ちは凄く嬉しい。
出来る事なら彼女の望み通りに主人公の事を放置してあげたい。でも、彼女が危機に晒されるのは嫌なのだ。
ここは厳しくさせて貰おうと口を開くが先に声を発したのはトルデリーゼだった。
「あの、主人公の事は真面目に考えるから…その前に答えて欲しいの。私達ってどんな関係?」
脈絡のない問いかけにぴたりと固まった。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。