第7話
「最悪です…」
ただいま絶賛反省中。調子に乗り過ぎたせいだ。
両想いに嬉しくなってベルンハルトとのキスに夢中になっていたのですけどね。
よく考えたら私達が居る場所ってガゼボで、とても見晴らしが良い。そして私とベルンハルトが会う時はいつも護衛の方とフィーネが遠くから警護してくれてる。
つまり…。
「見られちゃったね」
満面の笑みで言うベルンハルト。
確信犯でしたよね。気がついてましたよね。人様にキスを見られるのが嬉しいのですか。
あり得ない…。私にはそんな趣味ないです。
「もう外でキスしないから」
「そんな事、言わないで」
「私は人にキスシーンを見られて喜ぶ趣味ないの!」
「僕だってないよ?」
「いや、だって、ノリノリだったじゃない。最初から見られている事に気が付いてたくせに…」
ノリノリだったのは私にも言えるけど私は気が付いてなかった。
棚上げさせて貰おう。
「いや、気が付いてたけど…。後で困るリーゼも見てみたいなって」
Sですか。そんなキャラ設定は…いや、これはもう良いですね。
私だってゲームと違い過ぎますし、ベルンハルトも違う。比べるのも馬鹿らしい。
「もう人前ではしないから、許してね?」
「嫌よ」
「さっきと言ってる事が変わってるよ?」
「……だって結婚式の時は人前でするじゃない。その約束は要らないわ」
言わせないで欲しい。
あれ?どうして俯いてるの?
やっぱり私と結婚する気なかったのだろうか?
「あー、もう可愛すぎる!」
「わっ…!」
思い切り抱き締められて身体がぐらつく。
危うく後ろに倒れ込むところだった。私もユリアーナのように鍛えた方が良いのだろうか。
あの子、最近は筋肉が付いてきたって喜んでましたからね。いや、私個人としてはあまり付けて欲しくないところなんですけど、本人が嬉しそうにしてますし。
それより今回の事を彼女に説明しないと。
きっと呆れられるでしょうね。
「何考えてるの?」
「え」
「僕と居るのに僕以外の事を考えていたでしょ」
本当によく分かりますね。
デリカシーないくせに。いや、関係ないけど。
「ユリアの事を考えていたの」
「この状況で考えるのか」
むすっとされてしまいます。
嘘ついても仕方ないから答えたのに。
「ユリアみたく鍛えた方が良いのかと」
「何で…」
「ベルン様に抱き着かれてもフラつかないで受け止められるようにする為よ」
「やめてね?絶対に駄目だから」
真顔で言われてしまいます。
せっかくベルンハルトの為に鍛えようとしていたのに残念だ。
「でも、ユリアは」
「彼女は君の騎士になるのだから良いんだよ!」
騎士ですか。
もう三年前から騎士になるって言ってくれるんですよね。
「とりあえず鍛えないで。後、今は僕に集中して」
「は、はい…」
何か独占欲強くないですか?
いや、私も抱き合ってる状態で彼が他の人のことを考えてたら嫌なので普通の事かもしれない。もしくは私も独占欲が強いのかも。
「ベルン様って独占欲強いの?」
「当たり前。昔から君の周りに男が近寄らないように牽制してたからね」
「そ、そうなの…」
彼の気持ちには気が付いていたけど牽制については全く気が付かなかった。
「独占欲の強い僕は嫌?」
「好きに決まってるでしょ。私だって独占欲強い方だと思うし…」
「そうは見えないけど」
失礼ですね。
この際だから言ってやりましょう。
「お茶会の席で貴方が他の女の子に優しくしているが嫌だし、囲まれてるのもムカつく。常に笑顔で対応しているのも腹立たしいのよ。でも、ベルン様は王子だから仕方ない事だと我慢していたの」
最近だと側室狙いなのかベタベタする貴族令嬢が増えて苛立つ気持ちが酷かった。
格好良い人だから人気なのは当たり前だけどね。
ベルンハルトは驚いた表情をこちらに向けた。
「…知らなかった」
「バレないようにしていたの。それに今まではゲームの事ばかり考えて、ベルン様を想う気持ちに蓋をしていたから言えなかったの。でも、これからは言うからね?」
それで嫌われないと良いのだけど。
ぎゅーっと抱き締める力が強くなる。何なのだろうか。
「リーゼ、今すぐ結婚しよう」
「結婚出来る年齢じゃないわ」
この世界では成人しないと結婚出来ない。
私の正論にベルンハルトはむすっとする。
もう男性って感じなのに不意打ちで少年っぽさを見せられると胸の奥が熱くなる。
ギャップ萌えだ。
「リーゼは出来るだけ早く結婚したくないのか?」
「したいわよ」
即答させてもらう。
叶う事なら今すぐ結婚したい気持ちでいっぱいだけど常識はあるのだ。
「十六歳になったら結婚しよう」
「周りが許してくれないわ」
学生結婚でもありだと思うけど流石に王族と公爵令嬢が学生のうちに結婚は世間的には許さない。
分かりきっている事だ。
「王太子と王太子妃の結婚式なの。私は国中から祝福されるような結婚がしたいので我慢して頂戴、王子様」
「今日ほど王子が嫌になった事はない…」
「貴方が王子だったから私達は婚約出来たのだと思うけど」
「王子で良かった」
どっちなのよ、と笑ってしまった。
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