第8話
私を抱き締めていた腕が離れていく。
寂しい。
いや、よく考えたらこれも全部見られているのだ。色々と遅い気がしますが今からでも離れた方が良い。
「ところで」
「どうしたの?」
「君の話の中で出てきていた破滅回避ってどうするの?」
「その話ね…」
もう良いじゃない。
そう言いたくなるのは私がゲームの世界じゃないと納得したからだろう。自分勝手な性格だ。
「どうして面倒そうな表情するんだ」
「私が思う破滅は貴方が私を嫌いになる事よ。嫌いになるご予定は?」
「ない」
「それなら良いじゃない」
「そうか……ってそういう問題じゃないだろ!」
私が納得しているのだから良いと思うのだけど。
どういう問題があるのだ。
「主人公だっけ?あれが変な動きを見せたらどうする気?」
両想いで盛り上がっていたせいで主人公の事を忘れていた。
「忘れてたのか?さっきまで散々話してたのに」
「もう良いかなって…」
「全く。それがもし君と同じように前世の記憶持ちで、なんだっけ、電波だっけ?だったら君を貶めてくるのだろう」
そうだった。
電波系ヒロインだったら確かに厄介な存在である。
あれの悪役令嬢を蹴落とそうとする思いは異常ですから。でも、面倒ですね。
せっかくベルンハルトと両想いになって楽しい学生生活を送れるはずなのに。
「主人公、居ないかもしれないわ」
「いや、居るよ」
「どうして知ってるのよ…」
まさか主人公の事を知っているとは。
気になっているとか…?
「言っておくけど彼女の事は興味ないから」
「はい…」
「君が話していた通りシェーン伯爵が最近アンネって子を母親と一緒に引き取った記録がある」
「それ主人公の名前ね…」
「そうか…」
もうそんな時期だったのか。
確かにあと数ヶ月で学園に入学だから当たり前か。
アードリアンは一足早く通っているし。
最近は碌に顔を合わせていないから学園の話は聞けていない。彼の容姿がゲームのキャラそのものになったせいで避けていた私が悪いのだけど。
「また他の人の事を考えてる」
「兄の事を考えていたの」
「リアンの事でも駄目だ」
「でも、ベルン様は主人公の事を考えているじゃない」
「リーゼの事を考えた結果、仕方なくだ」
そういうものなのでしょうか。
正直な話、ベルンハルトから主人公の事を聞くのは嫌なのだ。しかし私の為というのなら否定するわけにもいかない。複雑な気分だ。
「この世界はゲームとは違うけど、似てしまっているのも事実。彼女の事は警戒するべきだ」
「そうね…」
面倒ですね。
彼女が前世持ちの電波系じゃなかったら警戒も必要ないのに。
「今から対策を考えよう」
「面倒ね」
「リーゼ」
呆れた顔ですね。だって仕方ないじゃないですか。
「私はベルン様と仲良く学園に通いたいのにいちいち主人公の事を考えないといけないとか嫌なのよ」
「それは嬉しいけど…」
「ベルン様が私の事を考えてくれてるのは分かるわ。でも、主人公の事を考えている今の状況も腹立たしいの。だから、その、今からその心配をする必要はないと…」
私は面倒な彼女か。
自分が男だったら面倒だなって思う。いや、女のままでも面倒だと感じる。
中身が大人のくせに余裕がないとか馬鹿みたい。
「面倒でごめんなさい」
「いや、嬉しいから良いけど…」
そういえば私達ってどういう関係なのでしょう?
婚約者なのは間違いないですけど…。
「あの、主人公の事は真面目に考えるから…その前に答えて欲しいの。私達ってどんな関係?」
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