第25話

助けてください、味方がいません。


「本当にリーゼ様が格好良くて…」


ユリアーナの馬鹿。

どうして楽しそうに話してるんですか。

フィーネによって連行…いえ、エスコートされてやって来たユリアーナはそれはもう吃驚するくらい驚いた顔をしていた。

驚かせてしまった件は何度謝っても足りないくらいと思っていたのだけど。

何故か二度目の鑑賞会が始まり、王妃様がユリアーナに感想を尋ねたのがきっかけで私は味方を失いました。


「ユリアちゃんはリーゼちゃんの事好き?」


いつの間にかユリアーナの事も愛称で呼ぶようになった王妃様が尋ねます。

本人の前で聞きますか、それ。


「はい、大好きですよ!」


面白いので大好きって聞こえるのは気のせいだと思いたい。

見た目が美少女なので許しますけどね。


「本当に大好きです。リーゼ様は私の大切な親友ですから」


親友と言われると思っていなかった。

確かにユリアーナは親友と呼んでも良い相手ですね。

前世の記憶持ち関係なしに一番仲の良い女の子の友達ですから当たり前です。


「あらあら、リーゼもユリアちゃんが大好きなのね」


私の様子の変化に気がついた母が笑いかけてくる。

表情に出さないように頑張ろうとしたのですが、あまりの嬉しさに笑ってしまったのが原因ですね。でも、事実なので否定しません。


「はい、大好きです。ユリアは一番の親友ですから」


友達はユリアーナを含めて三人しか居ませんけどね。もし他の友人が出来たとしても一番の仲良しはユリアーナだけです。


「リーゼ、ユリアちゃんを大事にしないと駄目よ」

「勿論です」


死ぬまでの親友ですからね、大事にしますよ。いつ死ぬか分かりませんけどね。


「私もリーゼ様を大切にします。リーゼ様の騎士になるのが私の夢ですから!」


ユリアーナは楽しそうに笑う。私はともかく彼女は破滅に導かれて欲しくない。


「あら素敵!」

「ふふ、うちの子をよろしくね?」

「が、頑張ります」


王妃様と公爵夫人に笑いかけられて流石に焦ったのかたじろぐユリアーナはこちらに助けを求めてきますが笑顔で受け流した。


「ねぇ、リーゼちゃん」


ユリアーナと見つめ合っていると王妃様に話しかけられるので「はい」と返事をする。視線を向けるとにやりと悪戯っぽい笑顔を向けられた。

怖い。

こんな事を思うのは失礼だと分かっているのですが怖いです。


「ベルンとユリアちゃん、どっちが好き?」

「………ユリアです」


申し訳ありません、王妃様。

でも、嘘は良くないので本音でいかせてもらいます。


「あの……決してベルン様が嫌いだと言うわけではなく……えっと、その今はユリアの方が大切なので」


言い訳が思い付かなかった。

心の中でベルンハルトにごめんなさいをしているとユリアーナに脇腹を突かれる。


「リーゼ様、今言うべき事じゃないわ」


彼女を見ると若干呆れた表情になっていた。何故そんな表情を向けられるのだろうか。

王妃様は不愉快になって……なさそうですね。優雅に大笑いしてます。凄い技術だ。


「フラれちゃったわね、ベルン」

「え?」

「本当に母上は意地が悪い…」


振り向くとアードリアンとディルク、フィーネが笑いを堪えていた。

そして苦笑いを浮かべるエリーアスの隣には呆れた顔のベルン様が立っていた。

不味い事になりましたね。

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