第25話

「貴女も前世持ちでしょ?」


ユリアーナの言葉にぴたりと固まった。

貴女もって事はやっぱり彼女も前世持ちなのか。ディルクの話から予想はしていたけど本人から聞く事になるとは。


「リーゼ様、良かったら二人きりで話しませんか?」

「おい、ユリア。いきなり二人きりは…」

「構わないわ」


私も色々と話したい事がある。

ユリアーナを見るとにこりと微笑まれた。


「ベルン様達も良いですか?」

「リーゼが良いなら構わないよ」

「そうだな。リーゼ様が良いって言うなら」

「ありがとうございます」


お礼を言ってからユリアーナと二人で席を外した。ベルンハルト達から離れたところにあるベンチに腰掛ける。


「ユリア、貴女も前世の記憶を持っているの?」


回りくどいのは疲れるので単刀直入に聞くと「いきなりだね」と苦笑いを向けられた。


「正解。前世は日本人だったよ。リーゼ様も同じでしょ?」

「思い出したのはつい最近だけどね」

「私は五歳の時だよ。事故に遭って生死の境を彷徨っている時に思い出したの」


やっぱり事故の時に記憶を取り戻したのね。

そういえば私が記憶を取り戻した時も高熱で魘された時だった。命に関わる事が起きると前世の記憶を取り戻すのだろうか。

こればかりは確かめる術がないから確かな事は言えないけど。


「どうして私が前世の記憶持ちだと分かったの?」

「今日会うまでは半信半疑だったかな。ディルクがベルンハルトはトルデリーゼにベタ惚れだって話をしていて違和感を感じたのがきっかけ。ゲームの二人と全然違うからね」


どうやら彼女も前世では『学ラビ』をやっていたらしい。

ディルクがどんな話をしているのか知らないけどベルンハルトは私にベタ惚れではない。

王命で仕方なく婚約しているだけだ。


「別にベタ惚れじゃないと思うけど…。それにしても又聞き話だけでよく分かったわね」

「半信半疑だったんだよ。で、今日会った時に確信したの。ゲームのトルデリーゼと違うもん。後ベタ惚れだから」


なぜベタ惚れを推してくるのだろう。

それにしても頭が切れる人だ。前世では頭が良かったのでしょうね。


「悪役令嬢同士が前世持ちって妙な感じよね」

「ユリアは破滅フラグを回避しようとしているから大人しくしているの?」

「推しに断罪されたくないのよ…」


ユリアーナを断罪するのはディルクだけだ。

つまり彼が推しキャラなのだろう。


「推しキャラの妹になれて良かったわね」 

「悪役令嬢って設定じゃなかったら良かったのに」

「上手く破滅回避出来て居そうだけど」

「でも、キャラを変え過ぎて変に思われてる」


深く溜め息を吐くユリアーナに苦笑いを向ける。


「ディルク、ちょっと落ち込んでいたわよ。ユリアの性格が変わったって」


性格が変わっても大事な妹だと言っていた件については彼との約束なので言えませんけどね。


「性格が変わったって事よりもそのきっかけとなった事故のせいで落ち込んでるのよ」

「事故?」


ユリアーナは前世を思い出すきっかけとなった事故について話し始めてくれた。

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