サイコロレンジャー
サイトウ純蒼
サイコロレンジャー
「グアアアア!!!!」
「リーダー、ナイス攻撃!! あと一息だ!!!」
サイコロレンジャーの五人は最後の大ボスの魔王と対峙していた。
レンジャー達の攻撃が次々と決まり、既に魔王も虫の息。長く辛かった旅も間もなく終わる。
「よし、3レンジャー、サイコロを振れ!!」
リーダーの指示で素早くサイコロを振る3レンジャー。
「はい、それ!! ……よし!!!」
出た目には【雷の魔法攻撃】と書かれている。
「得意の魔法攻撃、しかも雷! それ、アルティメット・サンダー!!!!」
3レンジャーは両手を大きく上にあげると、強烈な雷魔法を放った。
「グアアアアーーーーー!!!!」
魔法攻撃に悲痛な叫び声を上げる魔王。しかしまだ倒しきっていない。
「つ、次は……? 5レンジャー!!」
しかし番が回ってきた5レンジャーは、直前の魔王の攻撃を受け瀕死状態に。
「5レンジャー、お前の番だ。どうするサイコロ振れるか?」
リーダーが5レンジャーのそばに来て尋ねる。
「リ、リーダー……、ど、どうしてサイコロレンジャーなのに5人しかいないんだ? ろ、6人目は……?」
唐突に痛い質問をする5レンジャー。
「ふっ」
「ふっ、ってどういう意味……」
リーダーが言う。
「5レンジャーはパスだそうだ。次は……、俺か、行くぞ!!」
「頼んだ!!」
「おう!!」
リーダーはそう言うと目の前にあるサイコロを思い切り投げた。
「……!!」
「どうしたリーダー! 何が出た??」
黙り込むリーダー。
「リ、リーダー……? どうしたんだ? 何が出たんだ?」
「……ゴール」
「は?」
「ゴール、が出た」
「ゴール??」
驚く一同がリーダーの顔を見る。
「何だよ【ゴール】って? どうしてそんなもんがサイコロの目に入ってるんだ?」
2レンジャーがリーダーに問い詰める。
「し、仕方ないだろ。入れなきゃエントリーできないんで……」
「エントリー? 訳分からないこと言ってないで、どうするんだよ!!」
「グアアアア!!!」
放置され少しだけ回復した魔王が叫び声を上げる。
「だ、大丈夫だ。とにかくゴールで思いつくのは……」
「サッカー……?」
「よし、ゴールを決めたフリをしろ!!」
「マジか……」
レンジャー達はリーダーに言われ仕方なく魔王の前でゴールシーンの演出をする。
「グガアアアアア!!!」
「お、おい! 怒ってるぞ!!」
ふざけた態度に怒り出す魔王。
「さ、さあ次は誰の番だ?」
疲れた表情を見せるリーダーが尋ねる。
「つ、次は……、魔王です!!」
4レンジャーが答える。
「くっ、まずい。今攻撃されたひとたまりもないぞ……」
「グアアアア!!」
魔王は落ちていたサイコロを拾うと豪快に投げた。
「……ゴ、ゴオル?」
「お、おい! 魔王も【ゴール】を引いたぞ!!」
魔王のサイコロを注視していた3レンジャーが言う。
「マジか? どうなるんだ??」
レンジャー達が魔王を見ると、困った表情をしながら魔王もゴールシーンのマネをし始める。
「あ、魔王もやり出したぞ!!」
「そ、そうか。仕方ないな、これだけは誰も逆らえないルール……」
「グ!? グワアアアアァァァ!!!!」
しばらく皆でゴールシーンのマネをしていると、突然魔王が苦しみの声を上げて悶え始めた。
「ど、どうしたんだ? 魔王の様子が変だぞ!!」
「本当だ。何か苦しがっている! どうしたんだ!?」
レンジャー達が魔王を見ると、唸り声を上げながらその場に倒れ込んだ。
「ゴ、ゴールシーン……、ヒトリジャ…デキン……、グハッ……」
そう言うと魔王は強く光ってやがて灰となって消えた。
「勝った、、、のか? 俺達?」
魔王が消えた後でつぶやく。
「ああ、はあはあ、予定通りだ……」
リーダーが両手を膝に付きながら答える。
「嘘つけ! 【ゴール】を引いた時、マジで動揺してたじゃないか!!」
2レンジャーがリーダーに言う。
「ふっ」
「何だよ、その、ふって!!」
レンジャー達がリーダーに突っ込む。
「大丈夫だ、それより無事魔王を倒せた……」
「そ、そうだな。俺達やったんだな!!」
「ああ、胸を張って行こう!!」
リーダーは少し斜め上を向いて言った。
「どこへ行くの?」
3レンジャーがリーダーに聞く。リーダーは微笑んで答えた。
「決まってるだろ、俺達のゴールへさ!!」
サイコロレンジャー サイトウ純蒼 @junso32
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