スマートウォッチ

芦髙 了

スマートウォッチ

技術の進歩はめざましい。

自動運転の車もAIも当たり前のように普及している。記憶媒体の容量も飛躍的に増大し、例えばスマートウォッチは一生分の心拍数、GPS情報などを記録できるようになった。

私もそんなスマートウォッチを使っている1人だった。

15年前の3月16日、10時15分の記録を呼び出す。

GPSの記録を見ながら、若いカップルがひしめく鴨川の川辺を歩き、それが指し示す位置に1人腰掛ける。

心電図に変換された心拍数を見る。大きく線が跳ね上がっている。明らかに正常ではない。

「あなたもやっぱり緊張してたのね。初デートだったから」

慈しむように、小さく笑った。

亡くなった夫が使っていたスマートウォッチのGPSと心拍数の記録を辿り、彼がその時どんな気持ちだったのかに想いを馳せることが日課だった。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

スマートウォッチ 芦髙 了 @ashitaka_ryo

★で称える

この小説が面白かったら★をつけてください。おすすめレビューも書けます。

カクヨムを、もっと楽しもう

この小説のおすすめレビューを見る

この小説のタグ