第3話 カミカゼ・デリバリー
斗真が向かうポイントの店は、最近できたハンバーガーショップだった。
歩行者はいないが車は多い。左右を確認し道を渡り、付近に動物がいないことを確認してバイクを止める。
目の前を同じ箱を背負ったロードバイクが通ったので、斗真は手を軽く上げて挨拶をした。彼は振り返らなかったが同じように手を上げ斗真に応えた。
店に入ると、引き取るものはすでに出来上がっていたようで、店員は斗真の身なりを見て呼びかけた。
「———カミカゼ・デリバリー!」
笑顔の店員は斗真が働くカミカゼ・デリバリーサービスの名前を呼び、手にはハンバーガーが包まれているであろう袋を提げていた。
斗真は食糧配達員として働いていた。
店内にいる数人の客が斗真を見る。濃紺にアルファベットでKAMIKAZEと白抜きされた大型バックがカミカゼ・デリバリーのユニフォームで、国に認可された限られた人しかできない配達員の仕事は、警察や消防員などと同様に街中では注目を浴びた。
斗真は袋を受け取り、中に規定のプラスチックの箱が入っていることを確認して背負ってきたバッグに詰めた。
店内にちょうど入ってきた親子が斗真の姿に目を止めた。そして、すぐに子供が親の手を振り切って斗真に駆け寄ってきた。
「お兄ちゃん、お仕事頑張ってね!」
小学生低学年くらいの男の子が興奮して斗真に声をかけた。その目は、斗真の装備に釘付けでアニメのヒーローを見るかのようだった。
斗真は、あぁと小さく返事を軽く少年の頭をポンと撫でると颯爽と店を出た。
首もとの汗を拭いネックガードの位置を調整し、バイクに跨ると腰の黒いエアガンがカチャと鳴った。
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