~終~

 それから一週間後――。



「朔夜、ちょっと待ってよ!」


「静かにしろ、そろそろターゲットが通る所だぞ」



 私は今、朔夜と一緒にハンターの仕事をしている。




 事の成り行きを協会の佐久間さんに話すと、今までのようにハンター業を続けても良いという答えが意外とあっさり返ってきた。



 吸血鬼がハンターなんて何だかおかしいけど、取り締まるだけだからいいのかな?


 ……要は警察みたいな物だし、いいのかも。




 そんなわけで、今も朔夜と一緒に仕事中。


「それにしても、今回のターゲットって馬鹿なの? いつも同じ場所で不法吸血して」


 思わずそう零した私に、朔夜は鼻を鳴らして笑った。



「馬鹿なんだろうな。……取りあえずもう喋るな。あまりうるさいとその口塞ぐぞ?」



「ふーん。どうやって塞ぐつもり?」


 私は分かっていて、挑戦的に聞いた。



「こうやってだ」


 朔夜もそれを分かっているけど、あえて実行に移した。



 朔夜の大きな手が私の顔を包み込み、視線を合わせながら唇が触れ合う。


 何度も角度を変え、恋人同士のキスをする。



 競い合うように、求め合った。


 ラブゲームは、まだ始まったばかりだから……。




 そうしていたら、視界の端にターゲットの姿が見えた。


 私は急いで朔夜から離れ、現場を押さえるために身を隠す。



「っち……」


 朔夜の舌打ちが耳に届く。



「早く終わらせて帰って、続きをするぞ」



 不機嫌な声に、私は少し笑ってしまう。



「そうね、早く帰ろう」


 視線はターゲットに向けたまま、返事をした。



 するとターゲットが怪しい動きをしはじめ、通行人に掴みかかった。




「あ! 今よ朔夜。行きましょう!」


「ああ、行こう」





 そして、今宵も月は踊る。





 


 月を狩る者狩られる者



 望月


 朔夜朔月





 狩る者はどっち?


 狩られる者はどっち?





 それは


 その答えは……――






 ≪月を狩る者狩られる者【完】≫

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