元祖魔剣少女
ちい。
プロローグ
「あんたば愛しとったとよ……」
灰色の雲は空だけではなく地面まで飲み込もうとするかの様に分厚く、いつ雨が降り出してもおかしくなかったが、やはり、すぐにぽつりぽつりと降ってきた。
次第に雨足は強くなっていき、強く吹く風のせいで空から降ると言うよりも、横から殴りつけられる様な降り方である。
そんな悪天候の中に一人の少女が、何も無い草原に立っている。春か秋の晴れた日であれば、ぽかぽか陽気に照らされ、のんびりと昼寝をしたくなるような草原。
しかし、横殴りの雨降りに、全身を濡らし、長い黒髪が顔に張り付こうが気にせずに一点だけを見詰めて立ち尽くしていた。
少女の手には二尺八寸程と思われる刀が握られている。
鬼切安綱(おにきりやすつな)。
かつてとある武将が鬼の腕を斬ったと言う伝説の刀である。
そんな少女の見詰める先にあるのは、一体の死体である。
何故、それが死体だと分かるのか?豪雨とも呼べる雨の中、うつ伏せに倒れた人間はぴくりとも動かない。
息をするのも困難な程の豪雨の中でである。
その死体には
三鈷杵を柄とした刀である。
うつ伏せになっているため、顔は分からないが豪雨に晒され濡れてまとわりついた衣類のおかげで身体のラインが分かった。
どうやら死体は女性の様である。
少女はぱちりと刀を鞘へと納めると、死体へと深く一礼をした。そして、くるりと体の向きを変えると振り返らずにその場を後にした。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます