それでもただ魔女は唄う

希望ヶ丘 希鳳

プロローグ


本を焼いた。

ソレは、私にとって大事な、大事な聖書だった。


「全部、あげるね」


たった一言の言葉が、呪いのように耳から離れない。

取り出した煙草に火をつけ、私はぼうっと空を見上げた。


柔らかく天に伸びた紫煙。それは、祈りだ。


どうか、安らかに。

ただそれだけを祈った。


「さよなら」


赤く揺れる光の中へ、言葉と共に煙草を投げ込み、私はもう一度空を見上げた。


「私が、もらったもの。全部、あげるね」


光が消える。暗闇の中で私は――。

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