05

 さわろうとして。


「触るな」


 拒否される。すごい剣幕。


「ぺたぺた」


 しかし、さわる。


「おい。大丈夫か」


「え、なにがですか?」


「俺の身体。外からの兵器が。ええと、そうだな、身体が固くなる兵器を壊してきて、その名残が」


「あ、大丈夫です。たぶん」


 身体を確認する。大丈夫。


「代謝に不具合があるとかで、わたし、ふつうの人の2倍の細胞あるんで」


「そうか。おまえ。研究所の被験体か」


「あら。研究所をご存知で」


「どうりでなんか気になるわけだ。細胞提供者は俺だ」


「え。兄妹、ですか。わたしたち」


「いや、細胞のサンプルをもとにしているだけだから、遺伝的に繋がりはない。いやあ、しかし、生き残りがいたとはな」


「身体が頑丈なので。はい。背負いますよ。よいしょ」


「名前。なんていうんだ」


「エアリアル2番ドックにいました。だから、エリアルって名乗ってます」


「そうか」


「あなたのなまえ」


「俺に名前はない」


「じゃあ、ドックさん」


「なぜ」


「2番ドックだから。わたしの名前の使ってないところあげます」


「適当な名前の付け方しやがって」


「まあまあ」


 お互い。口には出さない。それでも。繋がっている。身体ではなく、心が。

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