灰色の都市

マツムシ サトシ

群像編

Welcome to The CITY:GRAY

道程 to The CITY

 わたしは、シティグレイに向かう大型装甲バスに乗っている。シティグレイに行けば、少なくとも食うには困らない。そう聞いていたわたしは一抹の希望を胸に秘め、揺られていた。


 運転席の窓から外を眺める。舗装がところどころ剝がれた道路が荒涼とした大地を這っていた。座席の窓から外を眺める。荒涼とした大地の向こうに綺麗な海が見えた。


 この大型装甲バス、収容人数は40名ほどに見えるが、乗客は10名ほどだ。シティグレイに入れるのは限られた人間だけなので、乗客が少ないのは当然のことではあるが。


 わたしも、一時的とはいえ労働・居住許可付きの査証ビザを手に入れるのにかなり骨が折れた。他の乗客はどういった所縁ゆかりの持ち主なのだろうか……


『乗客のみなさま、アルタイルコーポレーションALCO運営、シティグロウ⇔シティグレイ間の運送バスをご利用いただきありがとうございます』


 バスの中にアナウンスの声が流れる。シティグロウはわたしが生まれ住んだシティだ。貧困と腐敗、暴力や虚偽が住民の日常のシティだった。……叶うならば二度と戻りたくはない。


『シティグレイの到着は推定6時間後となります。まもなく野竜棲息区域となります。当コーポレーションのバスは最高峰の対竜装備を整えております。多少の揺れ等が予想されますが、ご安心いただきますようお願いいたします』


 こめかみに指をあてる。その必要はないのだが、拡張現実インターフェースにアクセスするための慣習となっている。視界にインターフェースが投影された。時間表示を確認すると13時と表示されていた。


 昼飯時だ。ポケットからエナジーバーを取り出す。それを口に頬張りながら運転席の窓に目をやると、黒い影が群れを成しているのが見えた。

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