走らせる ep2
arm1475
走らせる
走ってるだけで金になる、って話ではじめたバイトだったが、今頃になって後悔している。
後悔どころじゃねぇ、恐怖だ。
走るどころか逃げ回るってどういうことよ?
何でオレを狙って銃撃ってくるのよ?
お金ゲットどころか命がゲラアウトじゃねぇか!
畜生、また撃たれた。幸い外れたが次は当たらない保証はない。
俺はなんとか身を隠せる場所を見つけて一息ついたが、本当なんなんだコレ?
逃げ回って荒れた息を整えながら、オレはこの話進めてきたあの禿のおっさんから渡されたザックの中身を確かめた。中を見るなとは言われてなかったからな、何か役に立ちそうなものでも……
入ってなかった。
丈夫そうな外装のザックの中身は、奇妙な一文が書かれた一枚の紙切れだけだった。
<目の前に見えるものに騙されるな>
ナンダコレナンダコレ大切なことなんで二回言いました!
ホントなんだコレは!?
俺が命狙われる原因になったブツでも入ってるかと思ったのに、入ってたのは紙切れ一枚?
なんのドッキリだ、そのうちヘルメットかぶってプラカード持った芸人でも現れるかぁ??
しかし現れたのはまたしても銃撃。
どうやら隠れてる場所が見つかってしまったらしい、オレは慌てて逃げ出した。目の前のものが嘘って言うならこの銃撃も嘘だって言ってくれよ!
かれこれ3時間は逃げ回っただろうか……。あたりは暗くなり、銃撃の回数も最初の頃と比べると減ってきた。
オレはあれから郊外に廃工場がある事を思い出しそこを目指していた。子供の頃によくそこでかくれんぼをして遊んでいたから、隠れるにはもってこいの場所だ。
ほうほうの体で廃工場に到着したオレを待ち受けていたのは、このバイトを勧めたあの禿のおっさんだった。
キレたオレはおっさんに駆け寄り首根っこをふんじばって詰問した。
「ご挨拶だね」
何呑気なこと言ってやがる? オレは声を荒げて怒鳴った。
「なんで警察へ助けを求めない?」
けいさつぅ? そりゃあんた
あれ?
なんで?
「やはり頭の端にも出てこないか。心理、記憶、道徳補正PG14パラメータはアクティブ、と」
おっさんはメモをとりながら頷いた。なんなんだこのおっさん…?
「で、君はこれからどうする気だね?」
なんだよ藪から棒に。逃げるに決まってんだろ?
「何で逃げるのかね?」
狙撃されてるからだよ!
「何で撃たれてるのかね?」
そりゃあ、おっさんがこんなバイトを……あれ?
預かったザックの中身は変なメモだけ。いくら探しても何の手がかりもない。
「そもそも、何故、命を脅かされてるのに警察へ助けを求めにいかないのかね」
だって警察なんか行ったら逮捕されちま
あれ
逮捕?
誰が?
オレが?
「記憶補正パラメータが高過ぎるようだ、混濁しているな」
おいオッサン? この変な状況、何か知ってるのか?
そう訊くとオッサンは禿げた頭をかきながら答えた。
「コレはテストプレイだからネタバレしていいかな、実はコレ、コンピューターが君の記憶を元に作り出した仮想空間なんだよね」
……はい?
「君が警察行かないでこの廃工場へ来たのは、ここが安全な場所だと信じているからさ。昔ここでかくれんぼでもしていたんだろ?」
何故それを。
「我々が開発しているワークギアに、装着した者の記憶を元に仮想空間を作り出す機能を持たせる為のテストプレイヤーとして君を採用したのさ。
心象風景を量子化するためにプレイヤーの心理ロジックに制限を与えてこの空間を創り出し、銃撃によってストレスを与える事で心理や行動にどのような変化が見られるか試したのだが」
おいふざけんな。殺されるような目に遭わせるとか……。
「大丈夫さ、これは仮想空間、撃たれても死ぬようなことは」
次の瞬間、オレの頭は撃たれて爆散した。
「ほらね、死なないでしょ?
……ん?
どうした、何ともないで
あれ
どうして
死んでる?
死んで死んででででででででしししししんんんんんなななななななぜぜぜぜぜぜぜぜ
ぶをん。
「管理長、ログインテストお疲れ様です」
「最新シスオペソリッド、またフリーズしたか」
「生身の人間ではオペレーションに限界があるから、AIにシスオペをやらせるしかないのだが、なかなか
「次は疑似人格ではなく量子化した人格データを使ってみましょう」
「そっちもまだ問題クリア出来ていないんだろ?」
「生身の人間の情報ですからねぇ、前みたいに自身が量子化されたデータと分かると自己崩壊するリスクもまだありますが、今回は記憶と論理のモジュールを相当弄りましたので、そろそろ
「次も今回使用した死刑囚の
「了解しました」
終わり
走らせる ep2 arm1475 @arm1475
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