【ギルティー】お菓子の家の店主を追放いや処刑したいが、それは仲間が多い時にしか成功しませんよ?

茄子の皮

第1話

俺は、キャンディ・スイーツ。王都でお菓子屋さん【ギルティー】を営むパティシエだ。俺にかかればどんなスイーツもちょっとの素材と魔力で完成するのだ。




 材料費が激安で激旨なお菓子屋それが、俺の店。毎日魔力を込めた腐らないお菓子の家が目印で、たまに子供が食べているが気にしない。味は激旨だから、問題ない。


 最初は主婦層をターゲットにしていたが、しだいに老若男女に対応できる品揃が完成した。注文を受けてから作るので、在庫不良もなし。甘いのが苦手なおじ様も隠れて買いにくる店に成長した。




 そんな店に早朝から来客があった。








「ただいまより、罪人キャンディ・スイーツの国家侵略加担容疑の審議会を行う」


 豪華な装飾のついた服を着た、小太りな男性が高らかに告げる。このギャルメル王国の防衛長官らしい。店に来たことない人だ。




 俺は国王の目の前に鉄の足枷と手錠を付けられ、王国騎士団が両脇を固めた広間に、正座して座っている。




 ただのお菓子屋さんの20歳の男が、国家侵略加担容疑とか言う罪状で、王国騎士団長に連れられて初めて王城に入れたのだ。




「全く笑えないな。」




 他国から偵察容疑の兵士が、俺の作ったお菓子を大量に持っていたらしい。




 その兵士3人は、俺から離れた場所に這いつくばっている。3人は、何度も頭を下げている。




 確かに客としてきた男達だ。


「この国に攻めるのは止めだ!女王様にこのデラックスティラミス(30センチ四方の大きさの激旨ティラミス)を持って帰れば絶対友好関係にできる!何よりこのお菓子が毎日食べれるぞ!」


 とバカみたいに騒いでいた客達だ。


 デラックスティラミスの、ふわふわの食感は半日しか持たないと言ったのに、10個も買ってくれたとても良い客だ。




 あのティラミスはどうしたのかな?




「そこの侵略者が持っていた書状を読み上げる!」


 小太りな男性がしわくちゃになった紙を広げ、話している。


 内容は街の地図や、主要な戦力についてだ。王都を攻める道筋まで書いてあった。






「更にもう一枚ある。」


 男はどこかの紋章が煌めく高級な紙を取り出した。


「あの菓子屋は、やべぇ!あの菓子屋が俺たちの味方だ!デラックスティラミスは、全部食べてしまった。女王様に内緒だぜ!帰りにもう一度寄って来れば大丈夫だ。金の心配はいらねぇ、装備の盾を売ってきたぜ。」


 これがキャンディ・スイーツがこの侵略者の仲間の証拠です。と宣言する。




「キャンディ・スイーツ何か弁解はあるか?」


 玉座に座った王様が話す。金色の王冠をかぶり、赤いマントを着たいかにもな王様だ。もちろん金色の立派な髭もある。


 遠目で見たことあるが、こんなに近くでみるのは初めてだ。


 50代の渋いおじ様だ。月に一回閉店間際に激甘のキャラメルを買って行くおじ様に似ている気がするが、絶対違うだろう。




「この3人が私の店でお菓子を買ったのは、間違いありません。しかし、国家侵略などと一度も考えた事はありません。」


 俺は床に正座したまま答える。




「よし!キャンディ・スイーツは無罪だ!さっさと枷を外せ!」


 王様が大声で指示を出す。




「しかし、王様。この者がマシュマロン女王国の刺客だったらどうするのですか!」


 小太りの防衛長官が言う。




 マシュロン女王国。最近過激に戦争を仕掛けている国だ。




 この防衛長官は何を必死に言ってるんだ。




「それはありえん!もはや街全体が【ギルティー】の魅力に支配されておるし。」


 王様は力強く否定してくる。後半は何て言ったか聞こえないほど小声だったけど。




「この罪人キャンディ・スイーツは、王都のスイーツ市場を独占しておるのだ。お菓子の家とか言って病原菌を撒き散らしているはずだ。私が試した店は、ことごとく虫が集まって1日たりとも維持できませんでした。」




 何言ってんだこの防衛長官は?


 以前、俺のお菓子の家を真似して、お菓子の城を作ったお菓子屋が出来たが、開店初日に店が崩れた事があったな。


 それにしても、病原菌とは人聞きの悪いことを言うもんだな。


 


「私の店は、決して病原菌なんてありえません。毎日私が魔力を込めて管理維持してますので、いつでも最高品質を保証します。」


 病原菌なんて噂が流れたら、店が潰れてしまうから否定した。




「確かに外壁のキャラメルはビターで美味しかったな。」


 王様がぶつぶつ言ってるが聞こえない。外壁?いやいや、子供じゃないんだから、人の家の外壁を食べる人はいないでしょ。




「ありえません!それが出来るなら王宮魔術師以上の魔力が必要です!あんな安い値段であの商品は、用意できるわけがない!」


 防衛長官は、顔を真っ赤にして話している。




 あ~あ。この人俺の真似して、失敗した腹いせに罪人にしようとしてるのか。あの崩れたお菓子の城を作るなら、10年遊んで暮らせるほどの予算が必要だろう。


 そのお金を消したとしたら、怒ってもおかしくないだろうな。俺のオリジナル魔法でお菓子を作っているから、低予算でも実現出来るのだ。




「これが出来るのが【ギルティー】だろう!王都一いや世界一のお菓子屋だ!」


 王様は、王冠を外し立ち上がった。




 いやいや、王様。熱入りすぎだよ。


 やっぱりあのおじ様だな。キャラメル好きで、最近娘に冷たくされたから、苺のショートケーキを買って行ったおじ様だ。






「しかし、この者の無実を証明出来ますまい。1日地下牢に投獄しましょう。私が【ギルティー】を調査いたします。この王国の防衛長官とて!」


 防衛長官は何がしたいんだ?




 俺よりも、あの3人は罪人なんだろ?


 俺関係ないじゃん。




「よしわかった!防衛長官がそこまで言うなら仕方がない。1日調べてみよ。もし万が一国家侵略の証拠があれば処刑しよう。」




 防衛長官は、ニヤリと笑っている。




「しかし!証拠が一つたりとも証明出来なければ、防衛長官の貯金を全て使い【ギルティー】のスペシャルメニューを全国民にご馳走しなさい。」


 王様は笑顔で話している。




 いやあんたがスペシャルメニュー食べたいだけだろ!




 キャラメル大好きなおじ様が注文するスペシャルメニューは、ホワイトチョコケーキに、キャラメルナッツをスポンジに練り込んだ甘い中に、ほろ苦い味わいのスペシャルケーキだ。




 あれはおじ様と一緒に10時間かけて開発した、スペシャルメニューだ。




「これにて罪人キャンディ・スイーツの審議会を終了する。騎士達はキャンディ・スイーツとその3人を地下牢へ連れていけ!」


 防衛長官が言う。




 このまま牢屋に入れられるのか。店は大丈夫かな。


 あれ?店員の人達に伝えてないぞ。




 時刻は午前10時。


 お菓子屋【ギルティー】の開店時間となった。


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