無二のあなたに
いとうはるか
佐川メイの独白
この世には二種類のマラソンランナーがいる。東上サキとそれ以外だ。
サキは圧倒的だ。同い年である私とサキは、常にマラソンで競い続けてきた。そして常に私は二位で、サキは一位だった。
いま、私たちは高校一年生だ。まだまだ成長期と言える。じゃあ、これからの成長次第で勝ちの目があるのだろうか?
ない。全く。それはサキの後ろを走っていれば嫌でも分かる。
自慢でもなんでもない事実として、私は天才だった。その証拠に、中一で初めて全国大会に出て以来、公式戦では先輩も含めてサキ以外に負けたことはない。
ただ、私は百年に一度の天才で、サキは空前絶後の天才なのだ。
私と彼女はつい最近まで、同じ中学校で一緒に練習していた。二人で同じメニューをこなしていると、力の差ははっきりと感じとれた。
私は彼女から逃げるように別々の高校に進学して、それでもやっぱり私たちは友達だ。そしてそれでもやっぱり、サキは一位で私は二位でしかないのだった。
この世には二種類のマラソンランナーがいる。
二位以下は全て誰かの下位互換だ。一位は二位より遅く走れるけど、二位は一位より早く走れない。かけがえのないのは、無二なのは、他の誰にも代わりが出来ないのは、一位だけ。
だから、この世で無二なのは、サキだけだと思うのだ。
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