第2話 迫る危機()

 一体全体どうなってやがる。


……ちょっと待って。状況が整理できない。


 未確認飛行物体が、ビルを吸い上げて持ってこうとしている。オーケー、理解不能。


 そして俺は驚いて、たっぷり口に含んでいたコーヒー全部ぶち撒けた挙句の果てに、一張羅のスーツをびしょびしょにしちゃった。


「今日大事な商談あるのに……!」


 でもビルには戻れない。なぜなら未確認飛行物体が吸い上げようとしてるから。無理やり戻ったものならば……死ぬ。きっと死ぬ絶対死ぬ確実に死ぬ。


 「……じゃあ、あのニュースは事実を報道していたって訳か。てことは、石油王になるために、サウジアラビアに渡航していたあいつはもう。……別に仲良くなかったからいいか。」


 いいんだ、別に仲良くなかったから。


 そんな事より、まずは自分の心配をしなくては。目の前に未確認飛行物体がいるんだ。はっきり言えば命の危機だろう。

 しかも、ビル内に取り残されている人も多いはずだ。

 このビルはそこそこの大きさがある。取り残されている人も数百人はいるだろう。


 そうすると、俺の目の前で、B級映画みたいな、血みどろデストロイが行われる可能性は十分ある。


 俺の命と心の健康を守るため、早急にここを離れた方がよいだろう。













 


し か し ビ ル は 吸 い 込 れ な い !

 

 どうなっている、どうなっているんだ!

 そこそこの時間考えてたぞ。その間にも血みどろデストロイが始まっててもおかしくないだろ。


「いや、一切状況進展しねぇじゃねえか!」


 ずっと光ビルに当ててるだけじゃねぇか!

 普通そのまま吸い上げるのがテンプレってもんじゃねぇのか!

 テンプレ無視か! 

 やめとけやめとけ!テンプレ無視はだいたい失敗する原因なんだよ!


「てかなんでこんな進展しないんだ?」


 ふと思って、ビルに当たっている光を辿ってみる。


 ビルに当たっている光はそれはもうテンプレ未確認飛行物体のように、どんどん先細りしていく。どんどんどんどん、どんどんどんどん先細り……。


「いや、穴ちっせえなぁ!オイ!人一人分ぐらいしかないじゃんか!アホか⁈アホなのか⁈」


 何でその穴の大きさでそのビル吸い上げられるとおもったんだよ!

 人一人の何百倍の大きさあると思ってんだ!シンプルに無理だろ!分かれよ!

 てか、一人分くらいの穴しかないなら一人づつ狙えよ!ちょうど一人だけのやつがここにいるじゃんか!

 無能か?無能なのか⁈お相手相当な無能説あるぞこれ!


 だがそろそろ、ここを離れた方がよいだろう。

 今は無能ムーブかましてるとはいえ、いつニュースの情報のようにここ一帯が焼き払われたっておかしくない。

 腐ったって相手は未確認飛行物体。舐めかかったら、痛い目に遭うだろう。
















「いや粘るねぇ君ねぇ……!いや無理だって。そろそろ分かれって。もし吸い上げられたとしても、その大きさの穴じゃビル引っかかっちゃうよ!」


 いつまで無理ムーブをかましているんだこの未確認飛行物体は!

 西アジア全土を焼き払える能力どこいった!

 嘘か?やっぱりあの情報嘘なのか⁈

 サウジのバカは結局生きてるってことか?別に仲良くなかったからいいけど!


 「あーもう、こんなバカバカしいのにつきあってられっか!」


  俺には今日大事な大事な商談があるんだ。命よりも大事な商談だ。


 「こんな未確認飛行物体だなんだと騒いでる間にも人間社会ってのは進んじまうんだ。お前らと違ってな?」


……きっとそうだ。うん、そうだよきっと。社会ってのはそれほどクソなんだ。


 しかし、このコーヒーでびちょびちょのスーツをどう説明しようか。


「一から説明すれば分かってくれるか……?」


 『家出る時口にたっぷりコーヒーを含んで、それを一口も飲まずに外に出たら、未確認飛行物体がいて、驚いて口の中のコーヒー全部ぶち撒けてこうなりました』


……自分でも何言ってるかわかんねえなあ。

 最初から訳わからんぞ?


 どゆこと?どゆことなの?


そう言われたら『朝見たニュースに驚き、気が動転してました』と言うしかないな。もしくは、『自分も良く分かりません』とでも言うか?


 走りながら、そんな事を考えていると大通りに出た。


 この大通りは立派な高層ビルが立ち並ぶ、この辺りの地域で最もイケていると呼ばれている場所だ。

 高級ブティックにオシャレなサロン、ス○バや雑貨屋などなどイケてるリア充に必要なものがここで全て揃うと言っても過言じゃないだろう。


いつもだったら人でいっぱいなこの大通りも、やはり人っ子一人居やしない。
















 その代わり、未確認飛行物体がほとんどの高層ビルのてっぺんに存在していた。


 そしてそのどれもが、人一人分ぐらいの穴から光を出して、高層ビルを吸い上げようとしていたのだ。


「……今完全に理解した。
















 こいつらクソほど無能だ」


————————————————————

今回振ったサイコロの目の詳細

1回目

1 通常展開(前の展開の状態維持)

2回目

3 ギャグ展開

3回目

1 通常展開(")

4回目

1 通常展開(")

5回目

3 ギャグ展開

6回目

1通常展開(")


ちょっと目が偏りすぎ。

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