落ちこぼれが出会った『ちっちゃい英雄』
第3話 『特殊な部隊』への誘い(いざない)
「
周りに人がいないのを確認すると、再びそれを読み上げる。
「遼州同盟司法局……司法局って何?」
誠は『司法』と聞いて『司法試験』を思い出す。
『司法試験』と言えば『弁護士』を思い出す。
『弁護士』と言えば『サスペンスドラマ』で犯人を追い詰める人だと思った。
誠は大卒のわりに社会常識の欠如した偏差値教育の生み出した『理系脳』の持ち主だった。
「公務員で『司法』関係者と言えば『警察』か『裁判所』じゃん。どっちもパイロットはいらないと思うんだけどな……」
そう言って誠は周りを見回した。
朝の出勤時間と言うこともあり、通り過ぎる人も少なくはない。それでも誠を気にかけることなく、大柄の誠をかわして自動ドアを出たり入ったりしていた。
誠は再び辞令に目をやった。
「それに、実働部隊……って……意味が分かんないんですけど」
そう言いながら誠はただ困惑していた。
「東和共和国宇宙軍総本部の人事課まで、出てこいって言われて、来たのに。辞令を渡されて地下三階の駐車場入り口で女の人が迎えに来るから待ってろって言われても……」
誠は先ほどの東和宇宙軍の総本部の人事課の中での出来事を思い出しながら独り言を続けた。
「それに、人事の担当者の司法局実働部隊は『特殊な部隊』だって説明……なんだよ、それ。『特殊な部隊』って」
そんな誠の愚痴は続いた。
「『「特殊部隊」ですか?』って聞いたら『「特殊部隊」じゃなくて、「特殊な部隊」だよ』って……なんで、『な』が入るんだよ……エロゲか?嫌いじゃないけど。僕はパイロットじゃなくて、絵がうまいからキャラデザインで呼ばれたのか?あのスダレ禿の眼鏡の人事課長の大尉……木刀があったら、ぼこぼこにしてやったのに……」
今、誠がいるのは地球から一千光年以上離れた植民第24番星系、第三惑星『
その首都の『
地下三階駐車場。目の前には駐車場と言うだけあり、どこを見ても車だらけ。9時の開庁直後とあって、車の出入りが激しく、呆然と立ち尽くす誠の横を人が頻繁に本部建物と駐車場の間を行き来している。
そんな中、神前誠少尉候補生は呆然と一人、利き手の左手に辞令、右手に最低限の荷物を持って立ち尽くしていた。
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