第六十三話 遭遇
俺が先へと急いでいると、何かが壁にぶつかるイ音が聞こえてきた。
「なんだ?」
何かとは思ったが、住人が悪魔族に襲われていたらと考え音のした方へ急ぐ。
すると、壁に衝突して意識を失っているゼルドリスにそれ以外のメンバーもいる。
そして、その先には五人の悪魔族達。
ラミア達は何を呑気に悪魔族に背を向けているんだと思う。
いくらゼルドリスが心配でも今は戦闘中、そんな隙だらけの姿をさらしてどうするんだよと心の中で突っ込んでしまう。
そして、やはりと言うか、何と言うかラミア達に出来た隙をついて悪魔族達が攻撃を仕掛けてくる。
流石に見逃すことも出来ないと思った俺は、ラミア達と悪魔族との間に入り攻撃を受け止める。
「お前らはいつもそうだ」
その言葉に驚いているのか反応がない。
「あの出来損ないを連れて早く逃げろ! ここにお前らがいても邪魔だ!」
俺の声に反応を示すラミアは、
「急に出てきて何を言っているのよ! それにこんな雑魚達くらいゼルドリスが居れば余裕なのよ」
何をバカな事をいっているんだか。
既にゼルドリスは悪魔族から受けたダメージと壁にぶつかった時の衝撃で完全に気を失っている。
「あいつは既に気を失っていて戦えないぞ」
「何を言っているのよ! そんなわけないでしょ!」
「なら何故起きない」
「そ、それは……」
「それにあいつが気を失っていなくても同じだ。あいつでは悪魔族の一人も倒すことなどできないからな」
俺は悪魔族の攻撃をいなしながらラミア達と話す。
「あなたみたいな無能に何が分かるのよ!」
「俺が無能ね、なら無能以下のお前達は何なんだろうな?
「……」
「学園の闘技場での戦い。あの時襲ってきたのもこいつら悪魔族だ。あの時もゼルドリスは何もできずに無残にやられた。結果後始末をすることになったのは俺だ」
「……」
「お前らは邪魔にしかならいんだ! だから早く学園に避難しろ!」
俺は怒りに満ちた声で言う。
その声に対して、何も言い返してこないラミア。
大人しく言うことを聞いてくれる気になったかと思ったら、
「ゼルドリスはこの世界を救う勇者なの、あなたとは違うのよ! あの人が覚醒したらあなたなんかに負けないのよ!」
「そうか、そうなればいいな」
それだけ言って後、俺は何も話さず悪魔族へと突っ込んでいく。
その間一回だけ背後を見るとラミア達がゼルドリスを介抱しながら俺の事を睨みつけてきていたが無視することに。
「これでやっと集中できるとは言っても後は三体だけなんだけどな」
先ほどラミア達と話ている間に二体倒していた。
残すは残り三体。
強さは女性二人を救う時に戦ったやつらと大差ない。
この程度なら余裕で倒せる。
「後は魔法で倒すか、丁度後ろであいつらが見ているしな」
俺は、雷と火の魔法を用意する。
「ライトニングランス! ファイアーランス」
それぞれ三本ずつ、これだけあれば余裕で倒せる。
少しオーバーアタック気味ではあるが、まあいいだろう。
俺の魔法を見た悪魔族達は少し危険を感じたの少し逃げ腰になっている。
だが、逃がす気など毛頭ない。
「終わりだ」
その言葉と同時に六本の槍を悪魔族に向けて放つ。
特性上、ライトニングランスの方が早く命中する。
それによって倒される悪魔族、体がしびれてしまう悪魔がいたが、もう一つファイアーランスが命中することで倒した。
これで南門へ向かう道中にいる悪魔族は殲滅。
「後は外にいるやつらを倒すだけだな」
俺は南門へと向けて歩き出す。
この時、背後にいるラミア達に何かを言われるのではと思っていたが何も聞こえてこなかった。
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