第三十二話 勇者パーティーのそれから
スレイブ達、勇者パーティーがミリム村を出てから一日経ったある日のこと、
「ほお~、ここが盗賊に苦しめられている村か!」
ある男の率いるパーティーがミリム村へとやって来た。
その男の後ろに付いてきている女性が三人。
村人達は不思議そうに見ていた。
「何者だ!」
村の入り口を警備している者が訪ねる。
「言ったではないか、この村が今盗賊に苦しめられていると、しかも行方不明者まで出ていると聞いたぞ」
何を自慢げに言っているのか分からないが、
「その事件なら解決したぞ」
警備をしている男は言う。
「そんなことがあるか! 王都で訊いた話では、普通の冒険者では決して勝てない程強い相手で困っているそうだな。だからこそ、我々この世界最強の勇者パーティーが、その事件とやらを解決してやろうと来たのだ!」
何故ゼルドリスがこのような考えに至ったのか、それは数日前に遡る。
アスナにパーティーから抜けられたゼルドリス達は、冒険者ギルドに集まっていた。
回復役の抜けた穴はでかい。それは誰でも分かる。
ではどうするべきなのか? そんなこと考えるまでもない。自分達はこの世界最強の冒険者である勇者パーティー。誰も解決できない依頼を受け、解決して力を示せばいい。そうすれば自然とアスナも戻ってくると考えたのである。
だが、そう簡単にそんな依頼があるわけがないと思っていたとき、冒険者ギルドである噂を耳にした。
王都より馬車で二日ほどの所にある村で盗賊が現れて村人達を襲っている。しかも、山へと仕事に行った者達が帰ってこず、行方不明になっているそうだ。
ただこれだけ聞くと、そんなに難しい依頼には聞こえないが、その噂には続きがあった。村を襲っている盗賊は一人だが、そいつは村に常駐している冒険者パーティーを全滅させてしまうほど強いそうだ。ただこれは依頼として出ているわけではない。偶然村によった冒険者が聞いた話だそうだ。
その村に行くにしても正式な依頼にならず、ただのボランティア的なもので見返りは何もない。ないのだが、ゼルドリスはあることを考えていた。
もしも自分がこの村を救ったら英雄になれる。しかも見返りも何もなしに危険なところへと行く。勇者的行動って言うものではないか。もしもこの話をアスナが聞けばこのパーティーへと戻ってくる。そうすれば俺が理想とするハーレムパーティーの復活だ。
そういう考えからこの村を訪れたのだ。
だが、
「先日、冒険者パーティーの三人が訪れて村を襲っていた盗賊と、行方不明になっていた村人達を救ってくださった。それにお主らが本当に勇者パーティーだと言うならなぜもっと早く来てくださらなかったのだ」
「うるさい! お前では話にならん! 村長を出せ! 話を聞きたい」
警備の男は少し考えた後、ゼルドリス達を村長の元へと案内した。
「どうしたんだ?」
「勇者を名乗る者達が村長に会わせろと来ているのですがどういたしましょう?」
「勇者じゃと」
警備の男よりその話を聞いたとき、王様から話されていたことを思い出した。
本来の勇者パーティーとは別に元勇者パーティーがいると。今は四人組の冒険者パーティーであり、本当の勇者をパーティーから追放した。そして自分を勇者だと勘違いしているとのこと。ただ、今はまだ正式に勇者様率いるパーティーを勇者パーティーだと発表する気はない。もしもその者らがっ来たら勇者パーティーとして扱ってやれと言われていた。
「分かった。通してくれるか」
「っは!」
村長の前にきたゼルドリス達。
「喜べ! この村を救いに勇者が来たぞ! さあ話せ! 俺が解決してやる」
「もう解決しました」
「何を言っているのだ」
「王都から来た冒険者によって全て解決しました」
ポカーンとなっているゼルドリス。
「盗賊に脅されているのなら心配しなくてもいいのよ。私達勇者パーティーにかかれば、こんな事件朝飯前だから」
ラミアが言うと、
「そうだ、この勇者にかかれば、どんな相手であろうと負けはしないさ」
「はぁ~」
ため息を吐く村長。
「全て解決しております。見て下さい村を! これが毎日のように盗賊に襲われている村に見えますか!」
「いや……それは」
「見えませんよね」
ゼルドリス達は何も言えない。
「分かったのなら帰ってもらっていいかの」
何も言わずに村を後にするゼルドリス達。
そして村長も、一安心とばかりに胸をなでおろすのであった。
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