第三十話 報告

 謁見の間へと移動した俺達は、王様にミリム村での依頼の話をした。


 今回の依頼に悪魔族が関わっていたこと。その中にミリアリアに呪いをかけた犯人がいたこと。複数人数で動く者達がいたこと。


 一通り話終わると、


「そんなことが、……よく無事で帰ったの」


 凄く申し訳なさそうにしている王様。


「はい、ですが俺の中で少し不安に感じていることがございます」


「わしもじゃ」


 この感じからして王様も俺と同じ考えでいるのではないかと思う。


「もしかすると、悪魔族はわしらが思っているよりもこちら側への侵略を進めているのではないかということじゃな」


「私も同じ考えでございます」


 やはり、


「え、どういうことなの?」


 アスナはよく分かっていない様子。


 ミリアリアは、何も言わずにいるが、ある程度は理解しているように思う。


「順を追って話すとな。俺は、ミリアリアを襲った悪魔族は一人もしくは二人組かと考えていた」


「うんうん、それで」


「そこから数名の悪魔族がこちら側へと来ていると考えた。ただ、狙いが的確過ぎるのが気掛かりではあるが、ひとまずその話は置いておこう。その次に、村を襲っていた悪魔族の男、あいつも一人だった」


「そうね」


「俺はあの時、悪魔族は組織的に動かない連中なのだと思っていた。もともと自我がかなり強い連中だ、組織的な行動はあまり得意じゃないだろう。実際に戦ってみて実感した」


「私もそれは感じたわ」


「私もです。段取りが無茶苦茶でした」


「そうだ。最後に戦った二人はチームワークも取れていたところを見ると、元々から組んでいる連中なんだと思うが、それ以外の奴らは違うだろう。ただ、組織として形を成しているだけに過ぎない。だから過去の勇者達はそこをついて退けていたんだと思う。」


「わしも勇者殿と同じ考えじゃ。だが今回の者達は少し違うようじゃな」


「はい! 命令自体はしっかり行き渡らずにいたようですが、自分の役割はしっかり守っておりました。もしかすると、今までにはいなかった何者かが悪魔族に手を貸しているのではないでしょうか。それにより、ある程度役割を決めて、統率の取れた行動をさせようとしているのだとう思います」


「その何者かの存在についてどう思う」


「正体も、能力も分かりませんが、悪魔族よりも上の存在であることは間違いないかもしれません。それに、今後はより統率の取れた行動をとってくるかと思います。そうなると今の我々でも苦戦を免れません」


 ミリアリアとアスナが俺の言葉に対して頭を縦に振る。


「それほどか」


「はい!」


「二人はどう思う」


「私は……今のままでは二人の足手纏いでしかありません。いくら聖女と呼ばれ回復魔法に長けていても、自分の身を守れなければお二人の足手纏いになるだけです。これから、先の戦いのことを考えるともっと自分を磨きたいと思います」


 アスナがそこまで思っていたとは少し驚いた。


 アジト内でもアスナの戦闘を見て凄いと、俺は素直に感じた。回復魔法の力を女神様から授かり、王都では聖女と呼ばれるアスナ。その力は唯一無二の物で、それだけでパーティーへの貢献度は計り知れない。それに強化魔法と付与魔法、この二つをかけ合わせればある程度の相手なら余裕で勝てるだろう。それに、悪魔族とだって渡り合えるのではないかと思っていた。


「ミリアリアはどうじゃ」


「私は、……自分の力に少し自身がありました」


 過去形の話し方。


「正直、勇者様を除けばこの世界最強、誰にも負けないと思っておりました。ですが、悪魔族との最後の戦い、私は怒りで我を忘れてしまいました。心の中は冷静でしたが、体が言うことを聞かず、結果、死にかけました。勇者様が助けてくださらなければ私は今ここにいないでしょう。その時、今のままではダメだと、もっと強くならないとダメだとそう思いました」


 俺は何も言えなかった。


「そうか。二人が感じていることはその通りだとわしも思う。確かに二人は強い。勇者殿がいなければ間違いなく、それぞれの分野で世界最強であるだろう。ただそれは人族の中ではと言うことで、悪魔族を入れるとそうではないじゃろう」


「はい!」


「だが、今の段階でその考えに至ってくれてうれしく思う」


 王様はなんだか少しうれしそうな顔をしている。


「それと王様、一日でも早く残り二人の仲間を集めないといけないです」


「そうじゃの。文献にも悪魔族を退けるのは勇者と四人の仲間達となっておるからの、それについてはわしの方で探しておく」


「ありがとうございます。」


 これで今回の依頼についての報告は終了となった。


「勇者殿、戻って来てすぐで悪いが、次の依頼について話させてもらってもよいかな」


 勇者に休みはないのであった。

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