第七話 真実と新た仲間

 俺が目を覚ますと、王様と姫様が話をしていた。


 呪いの解呪には成功したようで、元気な顔を見ることが出来た。


「無事に目を覚まされたのですね」


 俺が王様に声を掛けると、


「勇者様! この度は私を助けていただきありがとうございます」


 姫様からお礼を言われた。


「わしからも礼を言う。本当に助かった。それとこれからのことについて話をしたいのだが、謁見の間まで来てくれるか?」


「分かりました。私からもお話したいことがございます」


 俺と王様、それに姫様の三人は謁見の間へと移動した。


 謁見の間にいるのは俺達三人のみで、それ以外の者はいない。三年前にここへ来た時と比べると、凄く広く感じる。まあ、広いことに変わりはないんだけど。


 俺がそんなことを考えていると、


「おっほん!」


 王様が一度咳ばらいをした後、


「この度は娘を救ってくれたこと大儀であった」


 改まって王様から言われると、なんか照れる。


「それでなのじゃが、今後のことについて……」


「その前に王様、一ついいでしょうか?」


 少し失礼かとも思ったが王様の話に割って入った。


「なんじゃ?」


 俺は、姫様を助けた後、女神様に会ったことを話す。


 すると、


「勇者様も女神様に会われたのですか?」


 王様の横に座っていた姫様が声を上げた。


「勇者様もと言われますと、お姫様もなのですか?」


「はい、十歳の誕生日の夜、夢の中に女神を名乗る女性が出てきました。その者から勇者様のことや新たなスキルをいただきました」


 夢の中であの女神が言っていた新たな仲間っていうのはまさか!?


「なら話も早いかもしれんな。勇者スレイブよ! これより新たな勇者パーティーをここに作ろうと思う。メンバーは勇者スレイブと我が娘、ミリアリア=クリセリアの二名とする」


 やはりか、


「それと、スレイブ君! もしよければ我が娘の婚約者となってくれんか?」


「え!?」


 またいきなり王様がとんでもないことを言った。


「王様! 今なんとおっしゃられたのですか?」


 唐突のことであったため、聞き返してしまった。


「我が娘、ミリアリアの婚約者となり、勇者の使命を果たした暁には、娘と結婚して新たなこの国の国王になって欲しいと言ったのじゃが、どうかの?」


 俺は王様の言葉に頭が追い付かない。それに、姫様の気持ちだってあるだろう。


「有難きことなのですが、私みたいな小さな村の一平民の私が姫様と婚約だなんてとんでもありません。それに姫様の気持ちもございますので」


「私はかまいませんわ」


 俺はやんわりと断ろうとしたのだが、姫様が特に嫌というわけでもないようで、


「うむ、娘もこう言っておる、どうかの?」


「分かりました。このお話有難くお受けさせていただきます」


 何故か俺が姫様と婚約することになってしまった。


「王様、理由を聞かせていただいてもよろしいでしょうか?」


「理由とな?」


「はい、何故私が姫様と婚約をすることになったのかです」


「そのことか! 我が王家は代々勇者となる者が継いできたのじゃ。そのため、わしの先々代の国王もこの世界を救った勇者であり、先代より勇者が現れたときは、次期国王をその者にするように言われておったのじゃ」


 またなんというか、勇者をするよりもこっちの方が大変じゃないか?


「勇者様! これから末永くよろしくお願いいたしますね」


 姫様が笑顔で言ってくる。


「はい! こちらこそよろしくお願いいたします姫様」


 こんな幸せなことがあっていいのかと思ってしまった。本当の勇者が俺であると言われたときもかなり驚いたが、それ以上に今の展開に驚かされている。


「勇者様、そのお姫様と呼び方は、やめていただけませんか? 私達はもう婚約者同士なのです。それにこれからこの世界を救う勇者パーティーの仲間で勇者様はそのパーティーのリーダーなのです。ですので私のことはミリアリアとお呼びください」


「分かりました。ミリアリア様」


「様付け、敬語も禁止です!」


「は、はい」


 なんだか、先が思いやられてくる。


「二人の会話に水を差して悪いのじゃがな。もう一つ、伝えておかないといけないことがあるのじゃ」


「悪魔族のことですか?」


「そうじゃ。我々王族にしか伝えられていないことであるために、ここで話しておこうと思うのじゃ。悪魔族については、女神様から少し話を聞いておると思うが、奴らが現れたのは今回が初めてではない。過去に数回出現し、人間を絶滅させようと進行してきておる」


「それを倒したのが勇者と言うことですね」


「そうじゃ。奴らはこの世界に存在する種族ではなく、別の次元と考えられている場所から突如現れる存在なのじゃ。過去の勇者達は、奴らがこちらの世界へとやってくる次元のトビラと呼ばれる物を封印することで、我々の世界へ侵攻してくるのを防いでおった。だが、その封印も数十年に一度解けてしまうことがある。そうなれば奴らは我々の世界へ攻めてくるわけじゃ」


「では、その封印が解けるタイミングで新たな勇者が選ばれているわけですか?」


「そういうことじゃな。だが今回の進行は聞く話とは少し違っておる。今までは奴らが直接人間に何かをしてくることはなかった。それも女神に選ばれた者をピンポイントに狙ってきておる。もしかすると、今回の奴らは今までと少し違うかもしれない」


 王様の顔は少し険しいものであった。


「その為、わしはいち早く勇者パーティーのメンバーを集めないといけないと思っておる。それに本来であれば、現勇者パーティーのメンバー達にも協力してもらうつもりでおったが、スレイブ君の話を聞く限り無駄であろうな」


 王様は少し残念そうな顔をしていた。


 それから王様は、俺にこれからこの城で生活してくれと言った。それと、新たに結成された俺とミリアリアの勇者パーティーは、一冒険者パーティーではなく、王直属の部隊として活動していくことになったのであった。

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