第四話 依頼
「なんだか懐かしい夢を見た気がする」
朝の日差しで目を覚ました俺は、とても懐かしい気持ちになった。今、俺がいるのは、昨日まで泊まっていた宿ではなく、王都でもかなり安めの宿である。
だからこそ、
「今日からバリバリ依頼をこなしていくぞ!」
一人気合を入れる。かなりボロい宿で、少し大きな声を出したくらいでは苦情などこないのだ。
そんな俺は、宿での朝食を食べた後、冒険者ギルドへと向かう。
(少しワクワクする。初めて皆で冒険者ギルドへ行った時もこんな感じだったな)
などと内心で、昔のことを思い出しながら向かって行く。ただ少し心配なこともある。
はたして、俺一人でこなせる依頼があるだろうか? 俺とパーティーを組んでくれる人はいるだろうか? などと、少しネガティブなことを考えてしまう。
だが、
「ネガティブな考えばかりじゃダメだ! ダメだ! 今日から冒険者としての新しい始まりなんだ! ポジティブに考えて行こう! そうすればきっといいことがあるさ」
自分に言い聞かせる。
そんなことを考えている間に、冒険者ギルドへと到着した。俺は、扉を開けて中へと入る。中は、朝一番と言うこともあり、依頼を受けに来た冒険者で、一杯であった。
俺もその例外ではない。ギルドの中に入ると、まず掲示板へと向かう。ギルド内には掲示板が三つ設置されている。小さな村のギルドだと一つらしいが、王都の冒険者ギルドとなると、依頼の数もかなり多い。そのためランクごとに掲示板が分かれているのである。
俺の冒険者ランクはEランク、下から二番目のランクであった。冒険者ランクはFからSまで有る。依頼の達成によるギルドからの評価でランクを上げる事が出来る。ただ、パーティーを組んでいると、リーダーの報告一つで個人の評価が変わってくる。そのためパーティー内でもメンバーによってランクが高かったり低かったりする。まあこれは、まれなパターンではあるが。
そのため俺は、冒険者になったばかりの頃は、パーティーにも貢献できていたために評価ももらえていた。だがそれも数をこなすにつれて一切評価をしてもらえなくなり、ランクを上げることも出来なく、今のランクと言うわけである。
俺は、FからEランクの依頼が掲載されている掲示板を見ている。そこに掲載されているのは、大体が森への薬草採取や街の掃除など、今まで受けてきた依頼に比べると、かなり低レベルの内容となっている。ただ今の俺の状態で、討伐依頼なんかに行ったら即死するだろうからしょうがないと思うしかない。
そんな感じに依頼を見ていると、
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急募!
娘の呪いを治せる冒険者求
国王 ゲルドリス=クリセリア
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俺が暮らす、クリセリア王国の国王様からの依頼があった。しかも呪いの解呪依頼。俺にはぴったりの依頼。
すぐさま依頼の紙を取った俺は、受付へと向かう。すると、周りにいた冒険者達が、
「おい見ろよ。またあの依頼に挑戦するやつがいるぜ!」
「また失敗するぜ!」
「そうだろうな」
俺以外にもこの依頼に挑戦した冒険者がいたようだが、その全ての冒険者達が失敗しており、俺も失敗するだろうと話しているようだ。
「しかも今度はFかEランクの冒険者だ!」
「絶対無理だろうな~。なんせSランクやAランクが挑戦して無理だったんだからな」
「かわいそうにな~。無駄な違約金を払わされるぜ」
依頼を失敗すると、俺達冒険者は報酬額の三分の一を違約金として払わないといけないという決まりがある。そのためこの依頼に挑戦した他の冒険者達はことごとく失敗し違約金を払ってきているのであろう。
だが、今回に関してはその心配はない。何故ならこの俺が挑戦するのだから。
などと思いながら受付へと依頼書を出す。
すると、
「あら~、スレイブさんお久しぶりです~、今日はお一人なんですか~?」
冒険者ギルドで、俺達勇者パーティーの受付を担当してくれているアミルさんがいた。
「見ての通りです。昨日パーティーを追い出されてしまいまして、今日からはソロの冒険者です」
少し笑いながら答える。
「そう~なの~、スレイブさん~も、大変ね~。頑張って~ね、私応援、するわ~」
「ありがとうございます。それで今日はこの依頼を受けたいのですが」
俺が出した依頼書の紙を見るアミルさん。
「そう~ね、スレイブさんなら問題ないで~しょ」
と受理してくれた。
「た~だ、な~かな~か、厄介な、呪いみたいだから頑張って~ね」
アミルさんに見送られながら俺は王城へと向かった。
王城は王都の中央に位置しており、少し高いところに作られている。そのために城へと向かおうとすると、どうしても坂道を上ることになる。冒険者ギルドは王都の第四区画にあり、城に近づくにつれて、第三区画、第二区画と言った感じに数字が小さくなっていく。区画ごとに役割があり、第一区画は富裕層が住む区画となっている。そのため大きな庭のある家ばかりである。
第二区画は工房区となっており、様々な工房があり、かなりの職人さんがここで仕事をしている。次に第三区画は、数多くの人が住んでいる住宅区と宿区となっており、俺が昨夜泊まった宿もここになる。そして、冒険者ギルドのある商業区となっている。商業区では毎日のように市場が開かれており、数多くの人が集まっている。
そして、今、俺は城へと向かうために第一区画を通っているのだが、
「ここはいつ通っても凄いな!」
周りにある大きな家を見て感激している間に、城へと到着したのだ。
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