第16話 パリの長過ぎる一日(後編)
※ 注意 ※
この章は2021年7月上旬に公開した文を修正したものです。
最初に公開したとき、仏独の国境を越えた日の旅程について、大きな思い違いをしていたことをお詫びいたします。
バスを乗り換えた場所はシュトゥットガルトだと思いこみ、そのまま公開してしまいました。
実際はストラスブールなので修正致しました。
旅行中にノートをつけておりましたが書ききれなかったことも多く、その夏にかけて少しずつ書き加えてゆきました。
そのノートを改めて読みながら考えてみると、その場所はストラスブールだと判断したほうが辻褄が合う部分が多いのでした。
ストラスブールとシュトゥットガルトはどちらもそれぞれ素晴らしい街なのに、私は「観光の予定が中止されてしまった街」として混同してしまったようです。
読者様に、また二つの街に、大変失礼いたしました。
* * *
前回のあらすじ:
パリ駅からTGVに乗るはずだったが、ストで運休。代わりのバスはまだ来ない。
ときおり添乗員さんと業者の電話連絡が聞こえたが、どこかに夕食の予約をとっていた。つまり本来予定されていたホテルでの夕食は中止だ。
いつまでも大人数で荷物を囲んで、人通りの多いパリ駅のビルの中心部にいられなかった。
昼には、私たちはバスが見えそうな道沿いを含めて2、3カ所に分かれて待つようになった。
私は道沿いにいた。ご夫婦と母娘連れが少なくとも一組ずついるグループだった。
道路をはさんで斜向かいにパン屋さんがある。臙脂色の庇のテントが少し古びて昔からあるお店という感じがする。
私たちの大半は、そのパン屋さんか駅中の店かどちらかで交代でお昼を買ってきて食べた。
今日の私のランチはパリのパン屋さんのサンドイッチだ! 思ってたのとだいぶ違う状況だけど……。
バスがいつ来るかわからず、交代で荷物の番をしながらでは遠くへ行けない。
パン以外の買い物、トイレ、退屈した時は駅の中に入る。
疎遠な親戚の家よりよほど長い時間をパリ駅で過ごしたのではないかしら。
水を買いに入った売店で「進撃の巨人」の特集が組まれた雑誌も買った。
この店を含め、有料トイレ用のクーポンを買い物客に必ずくれるお店もあるので、クーポンが何枚もたまった。
やっとバスが着いた。
車窓からの景色を眺める時が戻ってきた。
いわゆる観光名所でなくても、小さな町の住宅や店や教会を眺めているのも楽しいものだ。季節柄、花壇や植え込みのあるところには必ず花が咲いている。
* * *
高速鉄道から観光バスに変更したのだから、街歩きの時間が皆無となったのも少し残念だが仕方ない。
次の日にはノイシュヴァンシュタイン城に行けるはずだ。
ストラスブールで本来の予定のバスに乗り換える。宿泊先はもちろん予定と同じホテルだ。
けれど、大幅な遅れを取り戻すためにどのように経路が変更されたかは分からない。
どこかのサービスエリア内のレストランで夕食を摂った。夜9時ごろだったと思う。このときは夕暮れの気配がしていた。
セルフサービスの店で、トレーに載せる品物を選んでレジへ持って行き、会計する。
空腹のせいか少し盛りすぎた。可愛いチェリーのタルト(例によって日本のより大きい)を、向かいの席にいた若いご夫婦の奥さんのほうと半分こした。
ところで、このバスの車両にはトイレがあったが、それを使った記憶はない。よほどの非常時でなければサービスエリア等で済ませるほうが快適だとも聞いていた。
ストラスブールに着いたときはすっかり夜。
パリからのバスを下り、トランクと大きなバッグを抱えてこれから乗るバスへ移動する。二人の運転手さんたちの時間外の仕事に感謝すれども、慌ただしさと暗さで美しいはずの街並みがよく分からなかった。
ちゃんと真近で見た建物は駅舎だけだったが、その駅舎が素敵だった。
新たなバスに乗る前に駅のトイレに寄り、交代で荷物を見張った。まるでどこかのホテルのように高級感があり清潔そうだった。
無事にノイシュヴァンシュタイン城に行けさえすれば文句はないという気分でいたが、こんな素敵な駅舎のある街だと思うと、やはりただ通り過ぎたも同然では惜しい気がした。
(次回、初めて泊まるドイツ)
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