第21話 あの手この手

 ついにやってしまった、なんて感想はエリを抱いてしばらくしてから遅れて押し寄せてくる。

 感無量、悲願達成、大願成就、なんてどの言葉でも言い表せない興奮だ。

 俺の腕を枕にして横に寝るエリは、そんな俺の顔を見てからかってくる。


「すっきりしたら冷静になっちゃった?」

「そ、そうじゃない、けど。でも、いいのかなって」

「何がー?」

「だって、その……エリも、初めてだったんだろ?だから」

「だからいいんじゃん。好きな人と初めてができるって幸せだし」

「う、うん……」


 俺は心のどこかでエリは処女じゃないのでは、なんて考えていた。

 別にだから何というわけではないが、好きになればなるほど昔の男とはどうだったのだろうなんて女々しい嫉妬が沸いてくるのもまた男である。


 俺はそんな不安も全てさっきのひと時で吹き飛んでいた。


「でも、しちゃったらワクミン太ももくらいじゃ興奮しなくなっちゃうね」

「そ、そんなことないよ」

「えー、でも明日からワクミンからかう方法考えないとだね。もっと過激なのを」

「か、過激なのを?」

「あはは、興奮してるー。ワクミンって単純だね」

「……」


 俺は正直言えばもう一回したかった。

 ていうか一晩中したかった。

 しかしそろそろ親が帰ってくる時間になるので、エリは服を着て帰り支度をした。


「今日は泊まれなくて残念だなぁ」

「うん、俺もだよ……でも今週末なら多分」

「そんなにエッチしたい?」

「し、したい……」

「うんうん、正直者だねワクミンは。じゃあご褒美に」


 エリは俺にキスをしてからその唇を耳元に持ってきた。


「今度は、安全な日にしようね」


 そう言ってさっさとエリは玄関から出て行った。


 安全な日、という言葉を俺は最初、家に人がいない日か何かだと勘違いしていた。

 しかしその日、ムラムラが治まらずネットでエロ漫画を検索していた時に偶然そのセリフを使う作品を見てピンときた。


「安全な日って……もしかして」


 もしかして、もしかするのか?

 いや、そんなことを高校生である俺たちが……


 俺は大変なことを想像している。

 まさかそんなことをエリと……


 いかん、今日したばっかりなのにまたエリを求めてしまう。

 変なことを言い残すせいで俺のムラムラは一層ひどくなっていた。


 しかし疲れていたのか、ベッドに横になるとすぐに眠気が来た。

 そして気がつけばもう朝だった。



「おはよーワクミン!起きてるー?」


 翌朝はエリの電話でいつものように目覚めた。


 いつものように二人で学校に向かう間、俺はずっと変なことを考えていた。

 もちろんすぐにエリにバレてイジられるのだが、そんな彼女を見るだけで今日は心臓が弾けそうだ。


 なにせ昨日、俺はエリとエッチをしたのだ。

 薄暗かったとはいえ、彼女の全てを俺は見た。

 服の上からもエリの胸や、もちろんあんなところも想像してしまうし、その想像は妄想ではなく自分が見たリアルな映像の記憶である。


 だから興奮する。

 興奮しすぎて教室でもずっと勃ちっぱなしだった。


 それを隠すのに必死になりながらも今日に限ってクラスの連中がエリのことを散々聞いてくるもんだからいちいち昨日のことを思い出してしまう。


 質問の中には「佐藤さんとどこまで行ったんだ?」なんてストレートな質問もあり、それに対して正直に答えていいかどうか悩んだが、適当に「キスはしたけど」なんて答えていた。


 恥ずかしいのもあるし、エリの赤裸々な事情を話すことが嫌だという気持ちもある。

 彼女は俺だけのものだ、なんて独占欲もあった。


 結局昼休みまで俺の興奮は冷めることなく、終始下半身が苦しかった。


 今日はエリがお弁当を用意してくれていると言うので、俺は昼休みにそれをいただくことにした。


「ワクミン、今日は早起きして頑張ったんだからねー」

「うん、ありがと」

「ふふ、開けてみてー」

「どれどれ……!?」


 俺は蓋を開けてすぐに閉じた。


 なぜならご飯の上に海苔で「初エッチきねん」とご丁寧に書かれていたからだ。


 厳密にはエの文字の一部が蓋にくっついていたが、すぐに読めてしまった俺はクラスの連中から隠すように弁当を抱えた。


「あれれー、なんでしまっちゃうの?食べてよー」

「い、いやこれは……」

「ダメだよー、一生懸命作ったのにー」


 俺が隠そうとする弁当の蓋をエリが取り上げた。

 そして再び現れたその文字を何人かの男子生徒が見てしまった。


 もちろんそのあとは尋問、いやもはや拷問だった。

 何発やったんだ、とかちゃんと着けたのか、とかとかそんな質問で溢れ返る教室で俺は辱めを受けながらその弁当をコソコソと食べた。


 しかしエリは平気そうな顔で笑っていた。

 恥ずかしくないのかな……


「ワクミン、美味しかった?」

「う、うん。でもこれはやっぱり恥ずかしいよ……」

「えへへ、ワクミンを困らせちゃったー」


 エリが嬉しそうにしているが、そんな彼女を俺はやはり見ることができない。


 裸を見てしまえば太ももなんかに興奮することはもうないと思っていたがとんだ大間違いだ。


 むしろあの時の光景がリアルに想像できてしまう分、以前より興奮度は高い。


 クラスのみんなからもイジられすぎてクタクタになった俺は午後の授業で珍しく居眠りをしてしまった。


 そして気がつけば授業が終わっていた。

 もちろんエリが俺を起こしてくる。


「ワクミン、次はホームルームだよー。昨日寝るの遅かったの?」

「い、いやどっちかというとクタクタで寝たはずなんだけど……エリは?」

「私は……」


 エリが言葉を濁した。

 何か言いにくいことでもあるのかと、エリの顔を見ると少し赤くなっている。


「どうしたのエリ?」

「……誰にも、言わない?」

「え?う、うん何かあったの?」

「……実はね」


 エリが恥ずかしそうに俺の耳元で言う。


「一人で、初めてしちゃった」


 俺はその言葉で昨日のエッチなエリの姿を思い出すと同時に家で一人でしているエリの姿も想像してしまい、そのダブルパンチに完全にノックアウトされた。


「ぶっ!」

「あ、ワクミンまた鼻血!」


 俺は教室で盛大に噴火した。

 そして今日はあまりに刺激が強すぎたせいか鼻血が止まらなくなり、ほどなく保健室へと連れていかれた。


 そして気がつけばホームルームをサボっていた。

 なぜかエリも一緒に。


「ワクミン、最近保健室多いよね」

「うん……エリはいいの?」

「大丈夫大丈夫、先生に言ってあるし。それより」


 俺はようやく止まりかけた鼻血を拭きながらエリを見ると内股ぎみになってベッドに腰掛けた彼女が俺の隣でまた囁く。


「ここでしちゃう?」


 今度は鼻血を出すことはなかった。

 代わりに変な声をあげると共に俺の手はエリのいけない所に伸びた。


「あ、ワクミンやる気マンマン」

「え、だって……」

「ふふっ、でも学校はまずいからやっぱりやめよっか」

「そ、そう、だよね……」


 実際やる気マンマンになっていた俺は少しがっかりした。

 しかしそんな俺のやる気はすぐに上がる。


「今日はうちの親いないからね」


 畳みかけるエリの連続パンチで俺の股間は腫れあがる。

 そして放課後のチャイムが鳴る。

 


 

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