神様(仮)に脅されました!
ネオン
断りたかったな…
突然だが、俺は1日20分以上走らなければならない。たとえ何があろうとも毎日。
俺自身も意味がわからないが、とりあえず走らなければならないのだ。
決して自分の意思ではない。決して。
こうなったのはあの日からだ。
あの日、俺は普通に布団に入って寝たはずだ。
けれども、目を開けると知らない場所にいて、目の前には白い髪、白い髭を生やしたお爺さんが居た。
俺は、すぐにこれは夢であると思った。
「おお、来たか。まあ、座れ。」
目の前のお爺さんは俺に話しかけてきた。
俺は、夢だと思っていたので言われるがままに座った。
知らないお爺さんと2人きりで謎の空間にいるのは非常に落ち着かない。
「…えっと、誰ですか?…あと、ここは何処ですか?」
「わしは神じゃ。そして、ここはわしが住んでいる場所で、お主に頼みがあってここへ呼んだのじゃ」
……は?
とりあえず疑問に思ったことを聞いてみたが、余計わけわからなくなった。
こんな夢を見るって俺は大丈夫なのか…。
目の前のお爺さんはいたって真面目に答えてくれたように見える。
…いや、わけわからん。
けど、まあ、これは夢だ。
だから、考えるだけ無駄だと思い、目の前の自称神様の話を聞いてみることにした。
「俺にやってもらいたいことってなんですか?」
「なに、かんたんなことじゃ。お主に1日20分以上走るのを20年間1日も欠かさずに続けて欲しいのじゃよ。」
「は?」
まじでわけわからなさすぎてつい口に出てしまった。
自称神様とかいう知らないお爺さんから意味不明なことを頼まれるという状況に陥れば誰でもこんな反応をするのではないだろうか。いや、絶対にする。絶対に。
「訳が分からないという顔をしておるな。実は、この前、ちょっと、破壊神と喧嘩しちゃったのじゃよ。…それでな、言い合っているうちに、ついつい、売り言葉に買い言葉と言うのじゃろうか、賭けをしてしまって。その内容というのがな、もし、地球に住む人間が20年間一つのことを続けられたら、わしの勝ちで、破壊神に謝らせることができる。もし、できなかったら、わしが持っている世界のうちの一つ、地球を破壊され、さらに、わしが、あいつに、謝らなければないないんじゃよ。だからな、お主には、20年間一つのことを続ける、つまり、20年間1日も欠かさず20分以上走って欲しいのじゃよ。わかったか?」
……は?
いやいや、その説明で、はいわかりました、なんでいうわけないだろ。そんな、爺さん同士の喧嘩に俺を巻き込まないで欲しい。
しかも、そんなくだらない賭けに、地球を賭けないで欲しい。
……めっちゃ断りたい。
「あの、拒否したいんですけど、拒否した場合、どうなりますかね…」
「そしたら、残念じゃが、別のやつに頼むしかないのう。…でも、もし断ったら、お主に雷が直撃するかもしれんがな。…まあ、それでも良いのなら、断ってくれても良いぞ。」
自称神様は笑顔でそう言った。
うわっ、拒否権ねえし。神様にしか出来ない脅しすんじゃねえよ。職権濫用だよな、これ。
「…わかりましたよ。でも、毎日は無理だと思いますよ。」
「何故じゃ?」
「人間は体調崩して動けない日とかあるんですよ。それに、天気も、雨降ったり、雪降ったり、晴れてても暑すぎると流石に無理だし」
「そうか、ならお主に神の加護を授けよう。これで、お主は今後体調を崩さなくなった。」
神様すげー。こんな簡単に加護とか授けちゃうんだな。
「だが、天気はどうにもならないな。お主は、屋根のある家に住んでいるじゃろう。その中では走ることは出来ないのか?」
「…走る方法はあるにはありますが、それを買うお金が無いです。一人暮らし始めたばっかだし、まだ、大学生だから、お金ないです。」
「そうか、何が必要なのじゃ?」
「ランニングマシーンです」
「そうか、じゃあ、頭にそれを思い浮かべろ。……ほう、そういうものか、わかった。お主の部屋に置いておこう。」
うわっ、こいつ俺の考えてること読み取れるのかよ。神様ってなんでもできるんだな…。
「明日から励めよ。もし、サボったら雷が落ちてくるかもな…」
目の前の自称神様がそういうと、意識がだんだん遠のいていった。
で、目が覚めると、ちゃんとランニングマシーンが置いてあった。あれは夢では無かったのだ。
あれが夢では無いということは、サボったら雷を落とされる。
だから、仕方なく現在1日20分以上走ることを続けている。
俺は、実際に神様が存在していることを知ったと同時に、神様とかいるのは碌でも無いということを知った。
自分の力を使って脅してくる神様がいるなんてな…。
世の中には知らなくて良いことがあるんだな…としみじみと思った。
俺は、とりあえず自称神様に言われたとおりにしているが、今度会ったら文句を言ってやろうと心に決めている。
神様(仮)に脅されました! ネオン @neon_
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