第55話 最終決戦だ!

「魔王様って、じゃあ温泉を求めて旅してるのか? この世界を恐怖におとしいれようとしているんじゃなくて?」


 やっと、復帰した俺。だいぶ時間を食ったな。一泊しちゃった。女たちにお世話になりました。二十人でハーレムしたかったのに、三人だけか。まあ、三人の裸を見れただけで、ラッキーかな。


 ダンジョン内にテントとか張ったのは、イブリン魔法学校の卒業課程で、戦闘実地訓練したとき以来。


 学生は、最難関のこのダンジョンじゃなくて、もっとしょぼーい裏山のダンジョンとかで合宿だったけどさ。


 あのときは、ダンジョン内に温泉なんかないから、ただただつまらなかったな。ほんとに飯食って、就寝するだけ。あ、寝るときに女子の顔をそっとのぞくのは、楽しかったかも。


「魔王様も寿命百年とかで、支配とか飽きちゃったんじゃないのかなぁ?」と、半竜ちゃん。


 もう、俺が気絶してる間に服着ちゃって。一枚で、はおれるワンピース。緑の衣。生足は出してくれてるからよしとするか。細長い緑のトカゲのような尻尾もある。半分ドラゴンってのはすごいな。


 てか、裸になって追放されたのめっちゃさっきのことだったのかよ。裸で追放したらただの追いはぎみたいになるだけじゃん。


「なんでもいいけど、魔王様が今夢中なのは。温泉なのよ」


 くそぉ。だから温泉街の温泉の湯を奪ったんじゃないのか? ゆ、許さないぞ。温泉はみんなで入るものだ!


「あっちが変態魔王様の散歩コースだよ」


 茶髪ツインテは、普通に布の服ってどうなの。冒険者として見かけたこともないけどさ。


 冒険者じゃないのにダンジョンで、怪我もせずに普通に暮らしてるってことだろ。この【防御力】 2しかない服で。


 ってことはさ、魔王がいい奴ってのは本当なのかな。この茶髪ツインテを守ってやってたってことだろ。


 茶髪ツインテが指差したのは、小川の流れる細い道。暑いダンジョン内で、少し空気が涼んだ。川と溶岩にはさまれた浮島のようになっている、草木の生えた場所。おお、オアシスみたいなところだ。中洲なかすだな。


 その中心にいたあああ! 金髪ツインテの女装魔王! 


 だが、その周りにはドラゴンがいっぱいだ! 五匹いるぞ! くっそ、あれを全部倒すのは大変だぞ。


「ステフ、コウタ! 最終決戦だ! 腹くくれよ!」


 金髪ツインテが振り向いた。まるで太陽の輝き! 赤らめたほほがにっこりと微笑む! おおお! 


 俺を一発で認めてくれるのか? さ、さっきお互いに壁越しで探り合った仲だもんなぁ。


 いやいやいや! あの裸に惑わされるな! 中身は男なんだぞ! 


 どうする! あれを愛すると言うのか? いいのか俺! あいつは敵だぞ!


「あ、ちゃーちゃんと、ヴァンピちゃん、それに、リュリュちゃん。さっきぶりー。温泉見つけたよー」と、茶髪ツインテ、ヴァンパイア、半竜に手を振る。


 ズギューン!


「っぐ……ド、ドストライク」


 グー。思わずサムズアップ。魔王の第一声は――天使みたいでマジかわいかった! 

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