第53話 女子会?

 いやー、ステータスカード。もっとじっくり見たかったよな。【速 さ】が驚愕の3000とか、ゆっくり見ているひまがなかった。モンスターが死んでからしばらく時間が経つと、ステータス画面も消滅するし。


「うわあああああああああ?」


「どうしたコウタ! 変な声出すな」


「女の子が裸です!」


 コウタは目のやり場に困って両手で顔をおおう。俺は、すぐさま振り向いて目を見開く。


「クラン! ガン見しちゃだめえ!」


「止めるなステフ! あれは別のスインテール。茶髪だな。俺の見た金髪ツインテと別人だ。でも、裸にはまちがいない!」


 少女はそそくさと走り出した。俺に気づいたから? 


「キャー」


「黄色い悲鳴? 誰だ彼女を泣かせる奴は!」


「クランさんですよ」


「顔を隠して見もしないお前になにが分かる。待て! 俺が助けに行くからな」


 俺がみぐるみをはいだみたいな顔で逃げていく少女。ちょっとちょっとぉ。


 もしかして照れてる? 勘違いしないでくれよ。俺は健全だぞ。


 ラッキースケベってやつだ。裸ってのは不意に視界に目に入るものだ。これが、世の常。


「茶髪のツインテー。どこ行った?」


 岩肌が薄くなる場所を探して、壁を透視する。こ、これは……。見てはいけないものをまた見つけてしまった。「楽園」という言葉が脳裏をよぎる。


「はぁ……。はぁ……。こ、ここは、永遠の園。ユートピア、理想郷?」


「クラン。今度は急に立ち止まって壁にまた求愛? ちょっと落ち着いてよ。大丈夫? 震えてるし、鼻血も出てるけど」


 ステフが優しく鼻血をぬぐってくれる。ありがと。でも、鼻血は、まだまだ出てくる予感しかない。この壁の向こう側には。裸の少女が一人。二人。三人。四人。


 ざっと見渡しても二十人は確実にいるじゃん!


獄炎エシュトアダンジョン、万歳! きっと、これは恋の炎に焼かれるというダンジョンだったんだ」


「もう、クラン。わけわかんないよ。そこ、壁薄いの?」


「ああ、この壁の向こうは楽園だ。ん? ステフ?」


「ちょっと、開けるからね。ハァアアアアアアア!」


 気合を入れるステフ。拳に炎が灯る。


「えええええええええええ? 身だしなみ整えるから、待て!」


 前髪、横髪。後ろ髪もなでつけてっと。あ、前髪おかしいな。ちょっと、きざっぽく横になびかせるか。


 あと、えりも整えて。いつでもローブが脱げるように弓のホルスターをちょっと横にかけなおして。


 あ、ブーツ汚れてるじゃん。もー。今からこすっても取れないか。


 あと、鑑定士として指先のつやとか、爪とか磨いとこうかな。職業柄、一番最初に目に行くのは指だからさ。爪をぴかぴかにするための専用ハンカチ。ごしごしっと。


 占い師は指が命だぞ。って、俺、恋愛鑑定はしないんだけどな。まあ、少女たちが望むなら。俺は一肌でも、二肌でも脱ぐ!


炎上ファイアー正拳フィスト


 ドゴウゥ!


 ぶわっと、土煙が上がり、ドオオオオオンと洞窟内が振動する。少女たちのあっと、驚くような声と、恥じらう声と、恐怖の悲鳴!


 人ひとりが通れるとはいえ、大きな穴が空いたので、そこから身を乗り出す。あとに、ステフとコウタも続く。


「助けに来たぞ! なにがあったんだ!」


 俺の問いかけに一瞬、静けさがただよう。まだ土ぼこりでお互いにも何も見えない。けど、感じる! 


 脈がバクバクしてきた! 女子たちのこもった、むんとした匂いだ! 


 女子会? 俺も入れて! 


 え、俺のこと分かるかな? 男って分かる? 汗臭くはないだろ? 


 な、早くほこりが晴れないかな。俺を目で見て確認してくれ。いい男だって。さあ早く。


 お、また熱くなってきたな。洞窟内の温度が上がった。


「死ねぇぇええええええええ! ド変態魔王!」


 ゴウオオオオオ!


 火炎球ファイヤーボールだあああああ? ぐああああああああああああ!

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