第27話 新たな目的
夜はバーベキュー!
カエルのモンスターのガマ油を鉄板に、さっとひいていくのはギルドマスターのレアさん。
俺たちが担いできたドラゴンもプレゼントするようにたくす。
「あら、久しぶりね。最後に見たときにはイブリン魔法学校の学生さんだったような気がするけど。ずいぶんたくましくなったわね」
「いやー、レアさんほどじゃないけど」
とくに、その巨乳。年々大きくなってない? レアさんは赤毛でポニーテル。快活さもあるけど、垂れ目でちょっと
巨乳のお姉さま。妖艶すぎて、粗野な戦闘狂たちをまとめるギルドマスターには、あまり見えない。
レアさんが温泉に入ったら、その素敵な身体はどうなっちゃうの? きっと体がほてって汗の一つもつるりと流れちゃうんだろうな。
俺、絶対見逃さないからな!
だから、温泉クエストが終わるまで待っててくれよ!
「サブクエストも簡単にこなしちゃうのね? 私のギルドがランドルフのギルドになってたから心配してたんだけど。いつの間に、こんな頼もしい子を加入させたのよ」
ランドルフは、俺を見てなぜか照れる。いやいや、ほめられてるのは、俺だからな。
「できる男だろ? 宮廷から来たんだ。こんな才能があるのに、お役御免だと。かわいそうにな」
そう、俺ってかわうそ……イテ! 噛んだ。カワイソウだよな。だけど、クエストでお賃金をがっぽがっぽ頂くぞ!
「カンパーイ!」
昼間っから。未成年飲酒開始。あ、でも良い子は駄目だぞ。ネリリアン国では十六歳から成人。だから飲酒してもいいのだ!
一番おいしいとされる、もも肉は桃色で肉厚のぷりっぷり。筋肉質な尻尾は、こりこりで美味しい。
焼けば
「コウタお疲れー」とか、グビグビやった。コウタは俺より先にテーブルに顔から突っ伏したからギルドのみんな、俺の勝ちだってほめそやしてくれた!
おう、俺は勇者候補より強いんだ! 酒が!
ステータス画面に酒耐性を表示したら、間違いなくナンバーワン!
肉屋の店主もギルドに誘って乾杯する。銀羽コウモリの件で迷惑をかけたしな。
このころには昼も過ぎた。ほほも火照っててきて日中の日差しで、のどはからから。でも、そんなの気にしないぞ!
「乾杯! さすがだなあんた」
「それほどでもー」
あ、グラスを持つ手が震えて少しこぼしちゃったな。もう三時間以上飲んでるからな。
「
「え、やっぱり最下層にあるの?」
最初から嫌な予感はしてるんだけどな。
肉屋の店主、わずかジョッキ一杯で酔いつぶれた。俺も三時間を超えたから二人で顔をテーブルにつっぷした。お互いの顔をぼんやり眺めながら話した。二人とも顔がよだれでべとべとだ――マジ汚ね。肉屋の店主も確認したいのかランドルフに尋ねる。
「ひっく。なあ、ランドルフ。そうらったよな?」
ろれつが回っていないぞ。
ランドルフ、さすがは酒場の店長とだけあって酔っても各テーブルをふいて回ってる。
「っひっく。そんなのギルドマスターのレアだって知らないと思うぜ。なあ、レア?」
レアも顔を赤らめて酔っている。とはいえ、顔に少し出る程度で俺たち野郎どもと違って、すくっと立っている。
テーブルをふいてくれて、空いた皿を下げていく。
それから食器洗い。一人だと大変だろうな。食い散らかしてごめん。
でも、まだ、まだ飲めるぞ。俺はワインボトルに手をかける。自分のジョッキに入れた。入ったのは一滴だけ……空にしたの誰だよ! ――俺か。
「モンスターのうろつく、ダンジョン内で温泉に入れるとは、とても思えないわね。源泉から町の温泉に湯を引き入れるのがクエストよ。最下層にあるっていうのは確定してないけど」
レアが困惑した顔をする。彼女、眉のひそめ方まで色っぽい。レアさんのために、女湯の営業を再開させなければ!
レアさんの豊かに育った胸を想像して、俺の決意が固まる。
「どこ情報だ」
肉屋の店主は酔いつぶれたまま俺を指差す。
「だって、こいつがうわ言でさっきから女湯、女湯ってうるさいから」
いや、俺? 温泉が最下層にあるとは言ってないぞ。ていうか女湯って、うわ言で言っちゃってた?
そっちの方がまずい。
隣にいるステフは? 良かった。寝てる。狼の耳がもふもふだ。あ、こっち向いた。寝ぼけまなこだ。とってもかわいい。
「クラン……」
お、俺の夢? あら~また目を閉じちゃった。
夢の中でどんな感じ? 俺って。かっこいい? 惚れる? 惚れちゃう? 惚れちゃうよな?
それとも、ステフの王子様かな。いや、幼馴染でいてくれよ。じゃないと、俺……。その桃色の唇……。奪っちゃってもいいのか?
「女湯って何? むにゃむにゃ……」バレてる。夢の中でバレてる。夢の中なのになぜバレてる?
「いやー、緊急クエストの手がかりがある場所は、湯の性質的に女湯、男湯どっちに適してるんだろうなって」
「はあ。何でもいいけどよ。たかが温泉のために命かける価値はないと思う。
肉屋の店主が、さっきまでとは違うはきはきとした口調になった。
「だいじょうぶだって。温泉はあそこに確実にあるんだろ?」
肉屋の店主は気だるそうにぼやいた。
「昔、トアン魔法図書館にあった文献で『ネリリアン国の温泉の歴史』ってのがあってな。それにダンジョン内に、高確率で温泉があるって記載されていた」
ランドルフが割って入ってきた。
「ああ。それなら俺も知ってる。観光ガイドブックみたいな感じで、今はもう絶版だ。まあ、温泉の源泉がある説は、おそらくあの本が一番最初にそう書いたからだろうな」
「入りたいな」
肉屋がぼそりと言った。俺は即座に閃いた。
そうか、温泉があるのなら、
「やっぱり魔王が邪魔だな」
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