ニートの俺がVRMMOで人生勝ち組を目指す!

ダイス

第1話

モンスターとの戦いに明け暮れ、町に戻れば酒場で一杯を仲間とともに飲み、

自らの宿に戻る。朝になればギルドで仕事を探す。

そんな日々に憧れない人間がいるだろうか、、いや居ない!!

誰もが望むそんな日常が今ここに体現したっ!

完全没入型VRMMO!予約開始!


俺はそんなことを言っているテレビのCMをつまらなさそうに眺めていた。

とはいうものの、内心は心の底から湧き上がる気持ちを抑えていたのだ。

理由は明白、近くに我がマイマザーがいるのだ。

俺は現在全く持って働いておらずレベル高めのハイニートである。

そんな俺がこんなCMに歓喜なんてしてしまうと無論なにかしら文句を言われるに

決まっている。だからここは敢えて気持ちを抑えているのだ。


さて、どうしてもそのゲームがしたいが、現状財布の中は3000円弱だ。

まずは金を手に入れなければならない。

ハード自体が70000円、ソフトが7000円、つまりあと74000円が俺には必要なのだ。

親の財布から金を取ってもいずれはばれる。

何度も奪ってきた。これ以上負担はかけられないだろう。

というより、きっと次は追い出される。

この家に居させてもらってるだけで感謝しているのだ。

となるとお金を錬金する方法は一つだ。働く。そう。それだけである。

だが、働くにしてもできる限り最小限に抑えたい。

世間的に俺はもう27歳だ。普通に考えて俺にできるのはバイトだろう。

バイトと言えば高校生や大学生が多いイメージだ。

そんなお子様に教えられながらするなんて俺には耐えられない。

甘い考えだと笑うだろうか。ニートなんてそんなものだ。

プライドだけが無意味に肥大化してもうどこにも動けない。

だからこそ今回のVRMMOは大きなチャンスなのだ。


このVRMMOは世界的に有名になるだろう。そうすればネットでの

記事や攻略法、ましてや生活ブログなんてものもはやりそうだ。

ニートにはほかの人間にないものがある。そうそれは時間だ。

イベントがあればすべてのイベントアイテムを入手することもできる。

時間を有意義に使ってこの異世界ライフを通して俺の現実ライフも充実させてやる。


とりあえず俺は職を探すことにした。


7万4000円を手に入れなければならない。

手始めに家の中にあるゲームやらラノベやら漫画を売りに出すことにした。

結構な重さがあるそれらを運ぶには時間と労力がかかる。

だが世の中は便利なものだ。自宅まで買取しに来てくれるサービスがある。

問題は母親がいる時に買い取りに来られると色々と面倒臭そうだ。

母親は夕方からパートに出かけるが、いつ出かけるか俺は把握していない。

つまり買取業者の来る時間と母親の在宅に関しては運ゲーなのである。

こんな賭けに乗るか、それとも頑張って運ぶか、俺は究極の選択を迫られた。


結果的に選択したのは前者である。こんな量を運ぶなんて無理だ。

頑張るくらいならもう見つかってしまうリスクのほうがいいと判断した。


「ピンポーーン」


ついに来た!というのも2日後に来たのだが、何もせずに待ち続ける2日間は

とてつもなく長く感じるというものだ。

さて、問題は母親だが、先ほど家から出ていくのを二回から確認しているので

俺は賭けに勝ったということだ。ありがとう神様!俺の味方するなんて久し振りだ。


2階から何往復もするのはなかなかに運動不足の俺には堪えたがなんとかすべての

売りたい者たちを運び出すことに成功した。


最大の問題は値段だ。。。。


「いくらくらいになりますか。。。?」


「そうですね、9万8000円で買い取らせていただいてもよろしいですか?」


俺はこの言葉を聞いたときまさしく心躍り歓喜した。

今ならこの買取に来たお兄さんを抱きしめてキスしてあげてもいいくらいだ。

今まで決死の思いで貯めてきた俺のラノベや漫画、ゲームは現金に変わった。

無駄なものばかりと馬鹿にしていた母親もきっとこれには驚くに違いない。

だが、思ったより時間がかかってしまった。奴が返ってくる前に、、

早くこのお兄さんには退散してもらわねばなるまい。


「それでお願いします」


久し振りにこんなに人間としゃべったなと思いながらお兄さんの撃退に成功した。

後は部屋に戻って通販で買うだけだ。無論、外には出ない。

「ガチャ・・」

まずいっ!もう遅かった。ちょうど部屋に戻る途中に母親に見つかってしまった。

思ったよりもお兄さんとのイベントに時間をかけすぎたようだ。

だが、俺は今超絶上機嫌である。きっと今なら全てうまくいくに違いない。


「ママ、これ、使ってよ。。」


俺は少し汗をかきながら母親に1万5000円を差し出した。

ゲームさえ買えればそれでいいのでここで母親の好感度メーターを

あげることにチャレンジしたのだ。

因みにママと呼んでいる事には突っ込まないでいただけると嬉しい。

いいだろう、どんな呼び方だって伝わればいいのだよ。


「どうしたのこれ、ゆう君、働いたの?」


ついに俺の美しき名前がばれてしまったがいいだろう。

というかどうする。緊急事態が発生した。正直に売ったことを言うか

適当に働いたことにするか、これは最大の難関である。


「ゲームとか漫画とか売ったんだ。そしたらお金になったから

 これからは少しでも頑張ろうと思って。。。」


無論嘘である。

頑張るつもりなど毛頭ない。

俺はこのゲームで天下を取るのだ。

そうすれば色々とお金を錬成する機会が増えるだろう。

それで働いていることにしてやる。

全部が全部嘘ではない。これが俺の必殺曖昧な嘘。


「そうなのね。。ママ、応援するね。」


母親の心にクリティカルヒット!!

少し涙ぐんでいた。俺はこんなにも母親、いや、ママの心を

苦しめていたのか、、

罪悪感にかられながらも俺はここから成りあがると決意したのだ。

さらばだ母親よ、もう少しの辛抱だ。

パートなんてしなくてもいいくらいに俺が稼いでやるからな。

そう心に誓いながら俺は部屋に籠り、ゲームを注文した。






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