第11話 初めての戦闘
化け物は自身の体から生えた触手を使い、私に攻撃をしてくるが、思ったより動きが遅かったからか、倒れるようにしてなんとか回避する事が出来た。
「ユイちゃん!大丈夫!?」
「はい!大丈夫です!」
ロゼッタは私の事を心配しつつも、右手から出る無数の光線で化け物に攻撃を与える。
魔法が強力なのか、攻撃が当たると化け物は苦痛のような雄叫びをあげ、ロゼッタをマークし始める。
戦闘経験皆無な私でも分かるレベルだ。
伯爵はニヤニヤしながら私達の戦闘を眺めている。
たまに視界に入るのが鬱陶しい。
私はロゼッタに全てを任せてはいけないと思い、いきなりの戦闘に戸惑いながらも必死に化け物に矢を放つ。
「…っ!…っ!」(当たっても硬くて歯が立たない…!どうすれば…!)
矢のストックはネックレス内にかなりあるようなので、何とかなりそうではあるが、相手に全くダメージを与えてる感覚がない。
ロゼッタが冷静で、真剣に攻撃を続け、化け物の攻撃を何食わぬ顔で交わしているのに私は何も出来てない…。
役に立ちたいが、どうすればいいか分からない…。
矢を放ちながら、私は強く焦り始める。
(ただ矢を放つだけじゃだめ…!でもどこに当てればいいか…!…弱点があれば…!…弱点…?…それだ!)
化け物の弱点を狙えばいいと思いついた私は、相手の弱点はどこかにないかと探してみると、あるものが目に入った。
それは、化け物の無数の「目」だ。
何個あるかは分からないが、メインだと思われる二つの目以外はどこを向いているのかよくわからない。
上を向いていたり下だったりとバラバラでちゃんと機能してるように見えない。
「すぅー…っ!」
私は敵にマークされていない絶好のタイミングを見つけ、深呼吸をし、精神統一させ、弓を力一杯引く。
弦が切れそうになるくらいギリギリと音を立て、集中し狙いを定める。
どれかに当たってくれればそれでいい。
的は動いているが、弓道の的なんかより全然広い。
…ここだ!
……ーー結衣先輩が負けるなんて…。………これじゃ、優勝無理だね……。ーー……
「……っ!」
突然、弓道大会の時の記憶が画質の悪い動画のように蘇る。いや、邪魔をしてくる。
……ーー「………。」
期待を寄せていた部員全員の期待を裏切った、あの大会。
撃ちを得た私は何も言わず、後方へと下がる。
他の学校とは違い、うちの学校は重たい空気に包まれる。
「結衣、今回は…」
「……すみません。少し一人にさせてください……」
顧問の慰めの言葉すら、心を抉られる感覚。ーー……
「…ユイちゃん!」
「…っは…!」
ロゼッタが私の事を大声で呼び、今の世界へと引き戻してくれた。
「大丈夫!自分を信じてっ!」
ロゼッタは私の事を信用しているようで、笑顔でそう言った。
あの時のクラスメイトのようだ、と思ったが、今の私は違う。
自分を変えようとしている。いや、ここから変わってやる!
ビュッ!
私はギリギリと音を立てながら引いていた矢を化け物の目めがけ放った。
矢は真っ直ぐに化け物の目へ飛び、機能していると思われる片目に命中した。
グアアアアアアアアアアアアア…ッ!
「やったっ!」
化け物は凄まじい雄叫びをあげ、目に刺さった矢を取るためか必死に大きな手で目を掻きむしる。
私は嬉しさのあまりガッツポーズを取る。
「…ほぉ…。なるほどなるほど…面白いですね…」
それを見た伯爵は私の事を見ながらニヤニヤしていた。
何がおかしいのか分からない。
伯爵の笑顔はとてもイラつくものだ。
ビュンッ!
ゴズッ!
さっきの攻撃で私の事を完全にマークした化け物は、太い触手を私の腹部に向け鞭のように当て、強烈な痛みと共に私はショーケースに激しくぶつかる。
「う…うぅ…い…あ……」
ショーケースは粉々に砕け、ガラスの破片が床に散らばる。
今までに体験した事ない激痛。体全身が痛い。骨も、筋肉も、臓器も、何もかもが痛い。
口からは血が垂れ出し、喋ろうにも喉が痛い。
ロゼッタに助けて…と言えない。
「ユイちゃ…っ!」
「おっと、魔法を使ってみなさい?首切りますよ?」
ロゼッタは私の元へ近寄ろうとするが、瞬間移動してきた伯爵に杖のような剣を喉元に当てられ、身動きが取れない。
痛みを必死に堪えながら上半身だけ起こし、顔を上げると化け物が私の元へ近寄り、大きく口を開けている光景が目に入った。
何となく察しはついた。もうだめなんだ…。私は、化け物に喰われるんだ。
深い絶望感が私の事を襲い始める。
バグン…!
「う……そ……」
結衣が化け物に食べられる瞬間を見て、ロゼッタは強く絶望し、数分前の自分を憎んだ。
私が、あの時誘わなければ…、私一人で行けば…こんな事にはならなかった…。
「あ……ああ……」
「いやぁー、面白いものを見せてもらいましたよ。まさか、最初は頼りなさげなユイさんが「この子」に攻撃を与えるとは…思いませんでしたなぁー…。まあ、彼女はどうなったか分かりませんけどね…フフフフ…」
絶望し、崩れ落ちる様に座り込むロゼッタの目の前で伯爵はニヤニヤと笑みを浮かべ、手を叩きながら言った。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます