11. 【異】アクセサリー購入
国王への報告を終えたキヨカ達は宿屋に戻りケイと合流する。
「キヨカさん、これからの予定は決まってますか?」
「今日は装備を見に行くつもりー」
「装備ですか?」
「うん、ケイは王都のアクセサリー屋知ってる?もちろん装備品の方ね」
キヨカとしては厄介な用事が終わりいざ観光と行きたいところなのだが、レオナやコメント欄の皆から王都に着いたら何よりも早くとあるアクセサリーを購入するように強く言われていた。先に国王への報告に向かったことすら不満な人が居たくらいだ。
「ボクは1軒だけ知ってます。大通り沿いにあるところですね」
「セネールは?」
「僕も大通り沿いにある1軒だけだな。同じところかもしれないな」
「それじゃあそこに行ってみよっか」
単なるアクセサリー屋だったら山ほどあるが、装備品となると話が違う。特殊な効果が付与されたアクセサリーの販売には特殊な免許を必要とするからだ。邪獣と戦わない一般人には需要が無いため、王都と言えども店の数は多くは無い。
「ここです」
宿を出て大通りを進むと、ビルの1階にテナントとして入っているアクセサリー屋に到着する。店の表に見えるようにアクセサリーが並べられていて、それを見た感じセンスが良くて値段もお手頃価格だ。
「いらっしゃいませ」
店内には指輪、腕輪、ネックレス、イヤリングなど様々なアクセサリーが綺麗に陳列されている。見栄えを重視して陳列しているあたり、武器屋や防具屋とは毛色が違う。キヨカ視点での女子力ポイントもかなり高い。
「マヒを防ぐアクセサリーってありますか?」
キヨカが探しているのはマヒ攻撃から身を守るアクセサリー
これを最優先で入手するようにレオナ達から言われていた。
その最大の理由は、ポトフにある。
イルバースを倒して体が少し成長したポトフ。
彼女は見た目以外にも大きな変化があった。
それは、新たな魔法『アンチパラライズ』を習得していたこと。
アンチパラライズは状態異常であるマヒを解除する魔法である。
キヨカがスール村で初めてポトフと出会った時、彼女は毒を解除するアンチドーテを覚えていた。そして冒険に出ると毒を与えてくる邪獣に遭遇した。となると、今回アンチパラライズを習得したということは、この先にマヒ攻撃をしてくる敵が出て来る可能性が高いということだ。
マヒは毒よりも遥かに厄介。
治るまでは行動が出来ずに敵からの攻撃を受けるだけのサンドバッグとなってしまう。しかもマヒ中にマヒ攻撃を受けてマヒが永遠に継続するなんていうハマリのパターンもありうる危険な状態異常だ。
ポトフがアンチパラライズを使えたとしてもポトフがマヒになったら意味がない。マヒを解除する回復アイテムを多く用意する必要があるが、アイテム欄を圧迫する上にマヒの回復に追われて攻撃回数が減る。
ゆえに、レオナ達はマヒを防ぐ装備があるのなら最優先で入手するように勧めているのだ。邪気が無くても街中でイベント戦が発生してマヒ攻撃を喰らう可能性もある。ゆえに街を観光する前に入手して装備してもらいたかった。
「こちらの『快活のブローチ』になります」
鳥の形をしたブローチでトンビが羽を広げているような見た目で躍動感を感じられる。
「格好良いですね。他にはどんな形がありますか?」
「基本的には羽を広げた鳥の形になります」
「装飾の加工は可能ですか?」
「はい、喜んで承ります」
キヨカにとって装備とは単なる攻撃防御のためのものではなく、ファッションの一種。
似合うかどうかが重要なのだ。
「ブローチってことは鎧にはつけられないか。ジャケットなら似合うけどマントは無しかな。そもそも可愛い系とは相性が悪いんだよなぁ。私やケイの服もちょっと変えて……」
「き、キヨカくん。鎧の下に着けて見えないなら形はどれでも良いんじゃないかな?」
ブローチのデザインについて考え込んでいるキヨカを見て、時間がかかりそうな予感がしたセネールは思わず深く考えなくても良いのではと発言してしまう。
「何言ってるの!鎧だってジャケットだって邪獣が居ないところでなら脱ぐかもしれないじゃない!その時にみっともない姿を晒すなんて絶対ダメ!」
ファッションにこだわりのある女性に手抜きを勧める事は絶対にやってはならない。
セネールはキヨカの逆鱗に触れ、またしても好感度が下がってしまった。
「ばーか」
「ポトフくん!?」
ポトフがセネールの腰をグーパンで殴りながら煽る。
ポトフが一番興味があるのはご飯を食べることだが、それ以外に興味が無いわけではない。特にキヨガがやることなら何でも気になるため、一緒にアクセサリーについて考えるのも楽しいタイプ。
「セネールさん、今のはダメですよ」
ケイもショッピングは大好きで一日中アクセサリーを選んでたこともあるくらいなのでキヨカ派だ。呆れたようなジト目でセネールを非難する。
レオナなど、見えないのを良いことにゲシゲシ蹴りつけている。
「やっぱり全身コーディネートを考えて形を決めないとね。他の装備や服を見てから決めるよ」
「キヨカくん!?」
女性のショッピングは長いのだ。
キヨカがその本領を発揮する。
「ボクも買おうかなぁ」
他の人が買おうとしていると、不思議と自分も欲しくなるもの。
ケイも自分の分を買おうかと悩みだす。
「ケイのも買うつもりだよ?」
「そんな悪いですよ!」
「いいからいいから」
何を言ってるのかと不思議に思うキヨカ。
すでにキヨカの中ではケイはパーティーメンバーの一員なのだ。
実際、設定的にもパーティーメンバーとして登録されていたりする。
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