【妹SIDE】 聖女としての修行で失敗する


 アリシアは滝の近くに来ていた。宮廷魔道士から教えて貰ったのである。姉であるセシリアがどのような事をしてきたのか。どのような事が出来るのか。

 

 そこでアリシアは宮廷魔道士から聞いた方法を試す事にしたのである。


(お姉様ーーあのセシリアに出来て私にできない事などあるはずがありませんわ!)


 結界の不出来を見て身ぬふりをして、アリシアは胸中で叫ぶ。


 滝から大岩が落ちてきた。巨大な大岩である。


「はあああああああああああああああああああああ!」


 アリシアは気合いを入れて聖女としての結界魔法を発動する。


「なっ!?」


 しかしである。結界は大岩に耐えられずに、あっさりと割れてしまったのである。


「う、嘘! 嘘ですわ!」


 どれ程、嘘だと思いたくても現実は現実である。


「あ、あの大岩をお姉様ーーセシリアは結界で簡単に止めたというのですか!?」


 宮廷魔道士から聞いた言葉は俄には信じづらかった。


 ドーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーン!


 結界で止めきれなかった大岩がアリシアに落ちてくる。


「うぎゃああああああああああああああああああああああああああああ!」


 ボキィボキィ!


 醜い断末魔と骨がボキボキと折れる音が響き渡る。


「い、痛い! 痛いですわ! 痛い! 死んでしまいますわっ!」


 なんとかアリシアは大岩から這い出てきた。


「ヒール! ヒール! ヒール!」


 アリシアは全身骨折したその身体をひたすらにヒールの魔法。つまりは回復魔法で癒やし始めた。


「な、なんて事ですの! 姉はこんな事簡単にできたというのですの! とても信じられませんわ! け、けど負けませんわ! お姉様には絶対に負けませんわ!」


 これ程の痛手をおいつつもアリシアは決してセシリアの代わりとして、聖女の務めを果たす事を諦めてはいなかったのである。


次のアリシアの修行に映る。


 ◇ 


 魔界のような場所であった。多くの人骨がそこら中に転がっている。


 目の前にいたのはアンデッド系のモンスターである。大鎌を持った骸骨のようなモンスター。どこか死に神のような。リッチと言われるようなモンスターである。


 宮廷魔道士からセシリアは簡単にこのモンスターを倒したという事を聞いているのだ。


 アリシアは聖女としての魔法を発動する。アンデッドを消滅させる聖魔法を発動させる。


「はあああああああああああああああああああああああああああ! ターンアンデッド!」


 アリシアは聖魔法ターンアンデッドを発動させる。


「なっ!?」


 キケケケケケケケケケケケケケ!


 しかし、モンスターは不気味な笑みを浮かべ平然としていた。


「なっ!? 嘘! 効いていない!」


 キケエエエエエエエエエエエエエ!


「きゃあああああああああああああああああああああああああ!」


 アリシアはモンスターの大鎌をその身に受けた。


「う、嘘っ! 死んでしまう! ヒール! ヒール! ヒール!」


 アリシアは回復魔法で必死に自分を癒やした。


「くっ! 撤退ですわ! 撤退しますわ!」


 死んだらどうしようもない。アリシアは撤退する事を選んだ。


 こうしてアリシアがセシリアに追いつくために行った修行は悉く失敗に及んだのである。


 かくしてこうして、父である国王が王国に帰ってくる事になる。


 遠征で2週間程留守にしていたが、ついには帰ってくる事になったのだ。


 アリシアはどう言い逃れをするか、必死に考えていた。どう考えてもセシリアを追い出した事を糾弾されるに決まっているからだ。


 な、何とか、何とかしないと。アリシアは言い訳を考え続けていた。


 かくして国王ーー父が帰ってくる運命の日が訪れるのである。




  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る