隣国に招かれてしまいます

王国リンカーンを追われた私は途方に暮れてしまいました。


ですが不安はありません。私には大聖女としての力がありました。この力があればどこの世界でもやっていける自信がありました。


私は自分一人では生きられない弱い女ではないのです。生きていけないという不安はありませんでしたが、やるべき事が漠然としてしまった事に対しては不満がありました。


今まで目の前にあった仕事を急に取り上げられてしまったようなものです。


「はてさて、これからいかがいたしましょうか?」


 私は考えます。これからの人生、何をしていけばいいのか。思い悩んでしまっていたのです。


――と、そんな時でした。私の目の前に一台の馬車が止まったのです。


 その馬車からは一人の凛々しい執事が降りてきたのです。眼鏡をかけた背の高い執事。


「もし、そこのお嬢様」


 その執事は私に声をかけてきます。


「わ、私ですか? 何か私に御用でしょうか?」


「この王国に聖女セシリア様がいらっしゃると伺いました。その聖女様に用があるのです」


 執事の男性はそうおっしゃっていました。


「私がそのセシリアです」


「なんと、あなた様が聖女セシリア様でしたか。申し遅れました。私は執事のギルバートと申します。隣国であるトリスタンからの使者であります」


「は、はぁ……ギルバート様ですか。私にどのようなご用件でしょうか?」


「はい。実は我が王国トリスタンは滅亡の危機に瀕しているのです」


「め、滅亡の危機ですか!?」


「結界を張る聖女がいない事から、凶悪なモンスターに襲われる事も多く、また奇病や難病に侵され、命を失う国民も多いのです。王国の王子も難病に侵され、今命の危機に瀕しております」


「そ、それは大変そうですね」


「セシリア様、どうか我が王国トリスタンに来ていただくわけにはいかないでしょうか? あなた様だけが頼りなのですっ! どうかお願いしますっ!」


 執事ギルバートは私に深く頭を下げてきます。それだけ状況が芳しくないのでしょう。悲惨な状況が目に浮かんできます。


 まともな聖女もいなければ王国を守る事など不可能です。さぞ辛い状況だと察っせます。


「いいでしょう。ギルバード様、貴国トリスタンに出向きましょう」


「おおっ! なんたる僥倖! セシリア様のお力があれば我が王国トリスタンも救われましょうぞっ!」


 こうして私は隣国であるトリスタンに出向く事になったのです。


 王国リンカーンには妹のアリシアがいます。ただの聖女のアリシアには私の代わりは少々荷が重そうではありますが、追い出したのはあちらの方です。


 だから気兼ねする事はないかと思いました。こうして私はギルバートと共に隣国トリスタンへ向かいました。




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