「お前は聖女ではない!」と妹に吹き込まれた王子に婚約破棄されました。はい、聖女ではなく、『大聖女』ですが何か?
つくも/九十九弐式
聖女ではないと婚約破棄されてしまいます
「セシリア! お前は聖女ではないそうだなっ! 婚約破棄するっ!」
「な、なぜですか! なぜ私が聖女ではないとおっしゃるのですか!?」
私、セシリアは王国リンカーンの第一王女です。王国リンカーンに『聖女』として務めていました。そんな時、婚約者である王子――ルドルフ様に突如婚約破棄を宣言されてしまうのです。ルドルフ様とはリンカーンと関わりの深い国ベルンツェルの王子です。
「そんな事は簡単だよ! 君が嘘をついていると妹のアリシアから聞いているからだよ!」
「その通りですわ。姉は嘘をついているのです」
物陰から姿を現し、ルドルフに寄り添ったのが妹のアリシアです。アリシアは正確には腹違いの妹です。国王が妻を何人も持つのは珍しい事ではありません。普通の事です。ですから腹違いの妹がいる事も珍しい事ではありませんでした。
「う、嘘だなんて……アリシア」
アリシアにもまた聖女としての資格と力がありました。ですからどうやらアリシアは私の存在が邪魔だった様子です。
そしてあろう事か、婚約者であるルドルフ王子までをも私から奪い取ろうとしているのです。
「僕は嘘をつく女性が大嫌いなんだ。だから君との婚約は解消させて貰うよ」
「ええ。お姉様、ルドルフ様もこうおっしゃってますわ。嘘つきなお姉様はどうかこの王国から出て行ってはくれないでしょうか? くっくっく」
アリシアは私の事をあざ笑ってきました。
「私は確かに聖女ではないかもしれません。ですがよいのですか? 私がいなくなったら王国はとんでもない事になりますよ」
私は忠告しました。
「問題ありませんわ! お姉様。お父様から血を受け継いだ私にも聖女としての十分な資質と資格がありますの。だからお姉様がいなくなっても問題なく聖女としての責務を私は果たせる自信がありますの」
「アリシアのいう通りだ。セシリア、どうかこの王国リンカーンから出て行ってはくれないか?」
「くっ……」
私は聖女ではないと嘘をついていたという事で、婚約破棄をされ、王国を追われる事になったのです。
私は確かに聖女ではありませんでした。しかし私は全くの嘘をついていたのではありません。
聖女を超えた存在、『大聖女』だったのです。
ただの聖女のアリシアには私がしていた務めの代役は些か重すぎると思うのですが。
果たして大丈夫でしょうか?
追い出された私が心配するのも余計なお世話かもしれませんが。
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