第3話 3歳の誕生日
俺は早速、テスナ母さんにもらった魔法の本の内容とおり、詠唱を試してみる
まずは水の魔法から試す
意識を集中して、右手の先に魔力を集めるのと同時に、ゴルフボールくらいの水の塊を想像する
そして本にあった詠唱を唱える
「来たれ、水の英霊よ、アクアボール」
すると、右手の先にある魔力が変質し始め、みるみると水に変わっていく
「うわぁ!なんだこれ!楽しすぎる!」
まだ言葉も完璧に話せないが、ついつい日本語を声に出して喜んでしまった!
それくらい感動しているのだ
「魔法を、俺はいま魔法を使ってる」
直ぐに他の魔法も試していく!
火も風も土も、出来るだけ魔力を絞り、最小の大きさから、少しずつ大きくしていく
火の魔法でドカァーーーン!!
とか怖すぎるしね、浮かれてはいるが良識の恐怖心は持ち合わせてる!
一通り発動したら、次は少しレベルを上げてみる
水なら球ではなく三角にしてみたり、火の温度を変えて青い炎を作ったり、風を回転させたりと、簡単な魔力操作で遊ぶ
魔法は発動してしまえば、割と自由に取り回すことが可能らしく、結構なんでも出来る
特に使えるのが無属性魔法の『サイコキネシス』だ
この魔法はまさに、俺が思い描いていた魔法だった!
遠くにある小物を操って、手元に持ってきたり、部屋の整頓やらをしたりと、日常生活で多用すること間違いなしだ
その日から、俺は家族に魔法バカと言われる程、魔法にのめり込んでいった
ーーーー
そんなある日、いつものようにリビングで魔法で遊んでいると、シア姉さんがドスドスと近づいてくる
「コラ!ノアー!」
うわ、びっくりした、いきなりなんだ??
「あら?どうしたのよシア、大声出して」
「別に何も!!」
何も無かったら大声出さないよ姉さん。
「前に、お姉ちゃんの私よりも魔法が出来たらダメって言ったでしょ! ノアも返事をしたじゃない!なんでバリバリ魔法使ってるの!」
そ、そう言えばそんな事を言ってたかも、適当に返事したっけ
シア姉さんは、体を動かすのが大好きで、魔法はあまり得意ではないのだ
「い?」
俺は誤魔化すために、少し可愛らしい仕草で返事をする
「ぐ、そんな可愛らしい顔したってダメよ!お姉ちゃんは惑わされないわ! 」
ち、ダメだったか、ここは素直に謝るしかないな
「ごめんなちゃい」
俺がそう言うと、シア姉さんの顔が緩む
すると、横から救いの言葉が聞こえてきた!
「シア、お姉さんならそんなことで弟を叱ってはダメよ? それにノアは魔法が好きだからやってるのでしょ? 弟の幸せを喜べるのがお姉ちゃんじゃないのかしら?」
テスナ母さんは声や口調こそゆっくりでふわふわしてるが、しっかりとした人なので、素直に話が入ってくる
「た、確かにそれもそうか、んー、ごめんねノア」
そう言って、シア姉さんは俺の方をむく
「魔法は楽しいの?」
「あい!」
俺は返事とともに、片手を元気よく上げてみる
実際に魔法は楽しいしね
「ノア、あなた、可愛すぎよぉーー! 好きなことを見つけれて良かったじゃない!!」
シア姉さんは俺に抱きついて頬をスリスリさせながら、そう言ってくれた
0歳児が言うことじゃないが、やっぱり子供は癒されるな
ーーーーー
あれからだいぶ月日は経ち、今日は俺、ノアールの3歳の誕生日だ
この世界では、医術があって無いようなもののため、出産時の母子や赤ちゃんの死亡率がかなり高い
だが、ある程度体が発育した3歳くらいからは、死亡率が一気に下がるので3歳の誕生日は特別なのだ
子のますますの成長と、繁栄を願って、どこの家でも盛大に祝う
貴族なら尚更盛大に行う
ウチは田舎の男爵家なので、武官文官のトップや商人の商会長、各ギルドのお偉いさん達が来ている
「ノア、ご馳走凄いね!」
「私もこんな沢山の料理は初めて!」
そう俺に言ってくるこの2人は、うちセンバート家に仕える騎士団の副団長ザダルマン、部隊長のヘルツェンの息子と娘であるハールとチコチーニだ
2人は俺と同い年で、将来は俺に付いて冒険すると抜かしている
ちなみに俺は、将来冒険するなんて一言も言ったことは無い
歳も同じで距離感も近いため、普段からよくつるんでいる
そのせいか、この2人は3歳とは思えないほどには頭が良い
「まあ、3歳の誕生日だしね」
「ノア、ハリー、チコ あなた達ももう3歳なのね、昔は3人とも可愛かったのに、こんなにふてぶてしくなっちゃってまあ」
3人で話していると、エルーナ姉さんが来て、話しかけてくる
「ちょっとエルーナ様、私は2人と違ってふてぶてしくなんかありませんよ!」
「あら、ふふっ、ごめんなさいね、いつも一緒にいるものだから、ついそんなイメージがついてしまうのよ」
「この2人のせいなのあか」
ため息混じりに言うチコの言葉は少し聞き捨てならないが、実際そうなのだろうな
チコだって女性の割に俺達と同じ遊びばっかりしてるから、態度や口調も男の子っぽくなるのはしかたないしね
「おいチコ、なんだよそれ、いつもいつも、お前が着いてくるんだろうよ」
「何よ、ハリーが着いてくるから、私とノアが仕方なく付き合って上げてるのよ」
「なんだと!」 「こっちのセリフよ!」
と、こんな調子で、普段から仲がいいのか悪いのか、小さなことですぐ喧嘩して、気づけばケロッと仲直りてる2人だ
一緒にいても飽きない
そんなこんなをしてると、準備も整ったようで、テーブルへ案内される
屋敷には、普段見ない顔も多く、他領からの来客もあるみたいで、かなりの数の人々が広間に集まっていた
この3年で知り得たこの領地について話しておくと
ここセンバート領は、ドリス王国西南の田舎領で、元々は王家直轄の領地であり
15年前の西国、ヘリステム王国との戦争で活躍した父さんが、英雄として爵位とこの領地を賜った。
三方を山に囲まれ進行しにくい地形と共に、残る一方は肥沃ひよくな草原が広がり、農地にかなり適した地形
そのためこの領地を敵に取られると、王国としてはかなり面倒なため、国土防衛の一手として、英雄をここにつけたらしい
まぁ、成り上がりに反感を持つ古い貴族達の溜飲を下げるための、田舎領への出向命令の意味合いも多分にあると思うけどね
まあ、こんな経緯でうちはここの領地貴族になったらしい
広間で各々お喋りをしている中、父さんが真ん中にやってきて、始まりの挨拶をする
「お集まりの皆様、お忙しい中我が息子の3歳の祝いの席にお越しいただきありがとうございます、ささやかにはなりますが是非堪能していってください。」
父さんのその言葉と共に、広間に料理が運ばれてくる
ふふ、どれも美味そうだ!
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