始まりの手紙
赤坂 葵
告白
私は恋をしている。
考える度に、胸の奥が痛くなる。
目で追わないようにしよう。好きな気持ちがバレないように、普通に話すようにしよう。
そう思っていても、気付いたら目で追っているし、話しかけられると、恥ずかしさと嬉しさで赤面してしまう。
もしかしたら、もう気付いているかもな。勘のいい彼なら有り得るな。そう思いながら私は、名前を書いたか確認する。そして彼の下駄箱の中に手紙を忍ばせた。
書いてある内容は『午後三時、屋上に来てください』という、如何にも告白するために呼び出す手紙だ。
来てくれるといいな。
期待を込めながら、私は下駄箱の扉を閉めた。
私は今日、好きな人に告白をする予定だ。
例え失敗に終わっても、この気持ちが伝えられるなら構わない。
確かに成功するのが一番だが……。
「あれ、どうしたの?」
突然後ろから声が聞こえた。聞き覚えのある声だった。
もしかして……。
私は深呼吸して振り返ると、そこには私の好きな人が立っていた。
「誰か待ってるの?」
彼がゆっくりと近付きながら、私に問いかけてくる。
彼が近付くにつれ、私の心臓の鼓動はゆっくりと早くなっていった。
「う、ううん。なんでもないよ」
「本当? 少し顔が赤い気がするけど……。」
私は平然を装っているつもりだったが、できていなかったようだ。
「え、うん! 多分大丈夫」
彼は「それならいいけど。無理はするなよ?」と言いながら、ゆっくりと下駄箱の扉を開いた。
「あれ、なにか入ってる」
彼は下駄箱の中にあるものに気付き、それを取り出して首を傾げる。
そして封筒の表裏を確認したかと思うと、笑みを浮かべながら封筒の中の紙を取り出した。
「これ、読んでいいの?」
私が書いたものだと、気付いている様子で聞いてきた。名前を書かない方が良かったかなって思いながら、うんと頷いた。
私が頷くと、彼は紙を開いて真剣に読み始めた。そして読み終わると、一息置いて口を開く。
「もしかして、何か話がある感じかな?」
「うん、言いたいことがあって……」
「話してる感じ、結構大事な話かな。ここだと人来ちゃうかもしれないし、場所変える?」
「ううん、ここでいいよ……」
私が手をブンブンと振ると、彼は「わかった」と言って私をじっと見つめる。
「あの……」
「うん。ゆっくりでいいよ」
「ありがと。あのね、私……」
私は一息置いて、続けて言う。
「君のことが、大好きです」
始まりの手紙 赤坂 葵 @akasaka_aoi
★で称える
この小説が面白かったら★をつけてください。おすすめレビューも書けます。
カクヨムを、もっと楽しもう
カクヨムにユーザー登録すると、この小説を他の読者へ★やレビューでおすすめできます。気になる小説や作者の更新チェックに便利なフォロー機能もお試しください。
新規ユーザー登録(無料)簡単に登録できます
この小説のタグ
同じコレクションの次の小説
関連小説
君に贈る花とともに/赤坂 葵
★1 エッセイ・ノンフィクション 連載中 3話
無題/赤坂 葵
★0 エッセイ・ノンフィクション 完結済 1話
いつかの手紙/赤坂 葵
★0 エッセイ・ノンフィクション 完結済 1話
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます